
1月5日・6日は神戸アートビレッジセンターにてFの階wsを開催しました。
20名の参加者の方と一緒に、Fの階3月公演の上演台本を使って実際に台詞を読んだり聞いたりしてみました。
テーマが「劇場で台詞を読む/聴く」だったことや、参加人数が大阪で実施している回の2倍以上だったことから、
大阪の回とは少し違った形での実施となりました。
ひとりひとりと質疑応答する時間は少なかったですが、その分、全員での討論や全員参加しての読み合わせ?
はとても興味深いものとなりました。
【1日目】
役を変更しながら、参加者全員で最後まで戯曲を読んでみました。
大勢の前で初めての台詞を口に出すことはプロの俳優でも緊張するものです。
皆さま勇敢に好奇心を持ってとりくんで下さって、とても素敵な時間になりました。
初めて戯曲を読んだ方、サークルなどで経験のある方、久しぶりな方…いろんなキャリアと年齢の方がおられ、経験者はそれぞれの課題を踏まえての本読みでした。
初心者の方は「とにかく台詞を読んでみる」のが第一目標ですが、
経験のある方には「今自分が課題にしていること」を読む前に表してもらいました。
ほぼ全員に読んでいただき、ひとりひとりの課題もうっすら確認したところで
1日目は終了しました。
事前に今の課題として挙げてもらったのは
・表現力をつけたい
・アクセントの置き方がよくわからないため台詞の言い方が単調で、結果、ただ早口で言い切る感じになってしまう。
もっとメリハリのある聞き取りやすい台詞の言い方ができるようになりたい
といったことでした。
読み合わせ後に出た意見としては、
・読みやすかった。
・テンションの高い参加者が多かったので、引っ張られて読んでしまった。
・テンポよく読めて楽しかった。
・台詞が頭に入っていないので、相手役の台詞を聞いている間に台本を見失ってしまう。
・初見の台本でついていくのに必死だったので、無意識に相手役のテンポに合わせてしまった。
・「台詞を読む」には、ダンスのように拍子のようなものも大切なのではないか?
慣れてくるとむしろ、助詞や語尾を読み飛ばしたり読み間違えたりしがちなので、
明日はそのあたりに気を付けて読んでみましょうということで一日目は終了しました。
【2日目】
演出家の久野那美のほかに、俳優(佐々木峻一)のアシスタントを加えてスタート。
①まずは、昨日読んだ戯曲の内容について話し合いをしました。
「この登場人物たちの正体は?」「映画館の幽霊の都市伝説と関係あるのか?」
「それがわかる手掛かりは?」
「この戯曲には何かしかけがあるのか?」
等々の話し合いを経て、
②本日の課題を話し合う。
・WS(稽古場)は失敗するための場所。どんどん失敗して、
それをみんなで共有して解決方法を考える。
・なので、WS(稽古場)では、失敗することは恥ずかしいことや無駄なことではなく、「課題を探すための重要な第一歩」。どんどん失敗して課題を探していきましょう。
・「失敗」とはなんだろう?
自分が「うまくいかなくて嫌だったな」と感じたり、自分だけが「うまくいった」と思ってるけど共演者が「やりにくい」と感じる状態。
・「観客」がだめだと思ったこと=「失敗」じゃないのか?
俳優の仕事は、舞台の上(物語の世界の中)で共演者との関係性をきちんと創ること。舞台と客席の関係を創る責任は劇作家と演出家にある。俳優は観客のことより共演者のことを考えて演技をしていきたい。
・演技のやり方にはいろんな方法があり、座組のメンバーや劇場の大きさや作品の内容などを踏まえて演出家が判断する。どんな環境でも「正解」になる方法があるわけではない。でも、同じ舞台の上では同じ方法を共有したい。
・作品の方向性と俳優個人が「楽しい」と感じる方向が一致していれば、
俳優は自分の感覚を信じて楽しく稽古を重ねていくことができる。
という話をして、まずは…
③7人が登場している1シーンを希望者6人+Fの階の俳優を1名加えて読んでみました。)
(台本をもって少し動く。そのほかの人は客席に座ってその演技を見ている。)
シーンが終わるたびに「どうすればもっと見やすくなるか」を見てる人たちも含めて協議してフィードバックしました。
・台本を持ってではあるけれど、「誰に向かって言ってる台詞なのか」を意識して、体の方向や顔の向きをそちらに向けてみる
・台詞をきちんと相手に届ける(自分の台詞が相手に届いたことや、相手から反応があるのを見極めるまで「相手(役)」に注目する)
・相手役から台詞を言われたらしっかり聴く
・自分に言われてる台詞じゃなくてもしっかり聴く
・聞こえてくる台詞に「賛成したいのか反対したいのか」など自分の立場を確認しながら聴く
・誰に向かって言っている台詞なのかを「台詞の言い始め」「言い終わり」両方で確認する。
・聞いてほしいことが伝わるように言い方を工夫する
等に注意しながら役を交代しつつ何度か同じシーンを繰り返し、変化していくのを確認。
終わってから「演じていて自分の中で何が変わったか」を話し合いました。
参加者、演出家、俳優から出た意見としては、
・人の話を聴くのは案外難しい
・うまく話が聴けた・伝わった と思える瞬間が時々あって、その時はとても楽しい。
・相手役が自分の話を聴いてくれてると思うと台詞が言いやすくなる
・意外な感じで台詞を言われると思わず反応してしまう。その時、表情が変わる(豊かになる)
・誰かの言葉を聴いたり、誰かに言葉をかけたりするときは、声だけでなく感覚もそちらに向いているはずなので、
ひとまず身体全体をそちらに向けて、会話が「どこからどこへ」向かっているのかを確認する
→全員がそうすることによって、観客席にいる人も、話題の中心が今どこにあるのかわかりやすくなる
・生き物が情報を全身で集めようとしてる姿は魅力的だし惹きつけられるものがある
(Fの階ではそれを「野鳥の心を忘れない」という言葉で稽古のスローガンにしている)
④「人の話を聴く」演技を実践する
台本を持ちながらだと相手役の台詞を「聴く」ことに集中するのは難しいという意見を踏まえ、
「聴く」ことに専念できる状況を創ってみました。
7人の登場人物(ABCDEFG)以外に、参加者全員に配役(HIJKLMN…)して舞台に立ってもらいました。
台本に登場する7人以外は、「その場にいるけれど台詞のない役」。
台詞を言うことに気を取られずに「他の人の台詞を聞いて反応する」ことに集中できる状況で、
Fの階の俳優+参加者全員で舞台中を使って残りの時間いっぱいシーンを演じてみました。
聞こえてくる台詞に合わせてうなづく人、表情を変える人、台詞を言っている俳優と同じ動きをする人、
話題の中心に走り寄る人、全然関係ない動きをする人、テニスの審判のように首を動かして会話を追う人、
相槌やつっこみを入れる人…
20以上のいろんな、話の聞き方が舞台の上に立ち並び、台本に指定されている俳優だけの舞台よりずっと豪華で魅力的な
風景が次々と立ち上がっていきました。いつまでも続けていたかったのですが、終了時間が来て、そこで終了。
参加者の感想を聞いて、3時間×2回のWSは終了しました。
参加者の方の感想としては…
・「演劇はコミュニケーションが大事」という意味がよくわかった
・台詞を言うことに必死になって、それ以外のことをおろそかにしていたと思った
・台詞を言っていない時間にすることがたくさんあることがわかった
・やりとりがうまくできた瞬間はとても楽しい
・「人の話を聴く」というのは面白い
・みんなでひとつの会話に参加するのは楽しい
等々。
Fの階の稽古でやっていることと同じようなことを大半が初心者の方である場で
一緒にできたことはとても貴重な経験でした。
Fの階の俳優と演出家にとっても、とてもとても勉強になる場でした。
WSは、台本を違えて今後3月まであと5回、大阪市内で行います。
「台詞を正しく読む/聴く」「戯曲を通して読む/聴く」
今回より少人数になると思いますし、テーマが少し変わるのでやり方は少し違ったものになりますが、
もう少しじっくり台本を読む/聴く作業を詰めたい方、ぜひ、参加していただければと思います。
戯曲は、階のこれまでの上演台本を使用します。
ご参加お待ちしています!(久野那美)
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お申し込みと詳細は
→こちら(WS申し込み)<今後のWSスケジュール>
■台詞を正しく読む / 聴く3 @芸術創造館
・1/14(月)19:00-22:00
・1/15(火)19:00-22:00
■台詞を正しく読む/聴く4@東淀川区民会館
・1/20(日)10:00-13:00
・1/21(月)18:00-21:00
■台詞を正しく読む/聴く5@東淀川区民会館
・2/2(土)18:00-21:00
・2/3(日)10:00-13:00
■戯曲を通して読む1@大淀コミュニケーションセンター
・2/27(水)10:00-13:00
・2/28(木)10:00-13:00
■戯曲を通して読む2@芸術創造館
・3/11(月)13:00-16:00
・3/12(火)13:00-16:00
