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「観劇入門2023~関東と関西の小劇場、どっちも~」で階をとりあげて頂きました。


ネピュラエンタープライズさんのおちらしさんweb記事、「観劇入門2023~関東と関西の小劇場、どっちも~」
で、階をとりあげて頂きました。
関西、首都圏の劇団の紹介や東西の違いなどについて、演劇ジャーナリストの徳永京子さんと演劇評論家の九鬼葉子さんの
対談をもとにまとめられた記事です。ぜひ、ご一読ください。

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https://note.com/nevula_prise/n/n1a1dca8e8177




おチラシさんwebにて、階の紹介をしていただきました。<「階」を観る楽しみ>


ネピュラエンタープライズさんの「おちらしさんweb」に、
階俳優陣と演劇ライター吉永美和子さんの対談記事を掲載していただきました。

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https://note.com/nevula_prise/n/nf7b6b004b6a3




■俳優対談企画 1 関彩葉(客席編)✕田宮ヨシノリ(舞台編)



舞台編に出演する田宮ヨシノリ(24)と客席編に出演する関彩葉(23)に、演劇について、作品について、稽古について、共演者について…語ってもらいました。缶々の階の創作現場や作品の雰囲気を知って頂けますと幸いです。

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自己紹介…

関  関彩葉といいます。東京で演劇活動をしたりしなかったりしています。

田宮   99年生まれということは23歳ですね。自分が今24歳。同世代ですね。

僕も関西小劇場で俳優してます。

田宮  したりしなかったって言うのは?

関  まあ、ずっと俳優で生活してるわけじゃないので。

田宮  ああ。なるほど。

関   演劇のことを考えてない時の方が多いし。

田宮  他のアートをしているとか?

 いえ。何も。

田宮  じゃあ、俳優にこだわってるわけではないということですか?

関  でも、自分のできることで、演劇のうまみを味わえるのが俳優なので。

田宮  もともと何からはじめたんですか?

関  中学の演劇部で。趣味で成り立ってるような演劇だったので、あんまり、なんか、人前で、「中学校からやってます」とは言わないです。高校は演劇部ではやらなくて、東京の小劇場にちらほら参加して、

田宮  めちゃくちゃ早いですね

関  たしかに、同世代はいなかったですね

田宮  中学の時始めたのはなんでですか?

関  自分にできることが他になくて。音楽や運動もあまり得意じゃなくて。

田宮  演劇見たことあるとかではなく?

関  小学校の学芸会ではメインやりたいって言ってましたね。

  なんとなく中学から演劇始めて、大学は、演劇の大学入って、それで今、フリーの一年目って感じですね。

田宮  節目の年?

関  なんともいえない1年でしたね。

関  田宮さんは、どんな?

田宮  僕は大学の演劇サークル学生演劇って言われる奴ですね。から出てきて。から、いろんなきっかけで関西小劇場に出してもらえることになって今に至るって感じ。

関  俳優以外もやってるんですよね?

田宮  もともと作家やりたかったんで、コロナで時間が空いたので、最近ちょっとずつやってるって感じですね。でも俳優楽しいですよね。そんな感じです。



関西と東京では若手の状況って違う?



田宮  今たとえば(東京で)同世代でこの人活躍してるなって言う事ってあるんですか?

関  バリバリあります。この世代、多いんです。私が意識してるからかもしれないですけど。

田宮  僕は(関西で)大学卒業して演劇ちゃんとやって行こうとしてる人とようやく最近会うようになって。演劇やりたいとか芸能関係とかっていうと大学卒業してこのタイミングで東京に行ってしまうから同世代が周りになかなかいなくて。さっき話聞いてたら(東京では)まわりに同世代けっこういるって言ってたから、やっぱりいるんだなと。

関  私が演劇の大学に通ってたことも大きいと思います。そこからつながっていることも大きいかも。

田宮  若手の劇団とかもある?

関  ありますね。

田宮  関西では、最近みんな始めた感じで、同世代の劇団ていうのはあんまりなくて。安住の地さんとかひとまわりうえの世代になる。僕ら世代で関西にはなかなかいない。

関  なるほど

 

出演の経緯。関「点転を見て」

 

田宮  今回は、おじさんっていったら良くないな…先輩チームと若手チームという感じになってる。もともと、東京の俳優さんが階に参加するのはどういうきっかけ?

関  最初は、点転の公演を見に行ったんです。

田宮  遠かったんですよね?

関  遠かったです。遠くて楽しいよって言うのが口コミであって。そうなんだと思っていってみました。それを見て、面白いなと思って出たいな、とぼんやり思ってて、それでせんがわコンクールで、別の団体で出場していて、階さん見て、面白いなと思って、そのタイミングで出演者募集あったので、応募しました。

田宮  関西の劇団に参加する不安とかなかったんですか?

関  それはなかったです。

田宮  階は、どんな印象でした?

関  作品ですか?

田宮  僕は最初から久野さんを知ってたり七井さんを知ってたりしたんですけど、

いきなりでしょ。ギャップとかありました?

関  募集要項がすごい丁寧というか細かいといういのが、安心部分ではあって。

ざっくり誰でもいいから来てね~ていう感じじゃなくて、応募する前からどういう人材を求めているのか、とか、どういう風に創るのか、とかいうことがわかる、というのはけっこう珍しいなと思って。応募する側としては安心ですね。

田宮  (募集の)作戦成功ですね(笑)

関  作品は、見て面白いなと思っていたので、参加してみて違うなと思う事はないだろうなと思っていました。やり方はどの団体も違うと思います。今回はじめて応募したので、(募集要項を)細かく書いて頂けてイメージがしやすかったなと。

田宮  僕は最初点々の階で、あの時ちょっとだけ演出助手についてて、すげえ面白かったんですよ。三田村さんも出てましたよね。七井さんも。あれの埼玉公演見たかったな。大阪と全然場所違うし。

関  場所よかったですよ。遠くに行ったかいがありました。

田宮  映像で見たんですけど、これは埼玉の方が面白いなと。行きたかったな。

関  空間に演劇が合ってる気がして なかなか珍しいことだなと。

田宮  缶々の階【舞台編】はどうでした?

関  ほんとによくこの短い上演時間でこんなにおもしろいところを詰めるなあとびっくりしました。

  

出演の経緯。田宮「WSvoiceドラマ→演出助手→」

 

田宮  そうだ、僕が階に出会ったきっかけを話しましょうか。

関  はい。おねがいします。

田宮  もともと、(階は)初心者WSをずっとやっていて。僕は2回生の時にはじめてWSに参加して。いやあすごいなと思って。WSもわけわかんないことをやるわけですよ。わけわかんないというか。台詞をうまくいう事とかすべて放棄して。それがなんかすごい面白いなと思って、それと七井さんがめちゃくちゃうまいなと思って。七井さんの劇団を見に行った時も「この人うまいな」と思って、次の年にWSオーディションがあって受けに行ったんですけど落ちて。次の年に点転があって、僕の公演がとんじゃって、ちょうど空いてた期間に、演出助手の募集があって。で、演出助手させてもらって。だからなんとなーく知ってもらってて初めて稽古場に参加したのがそれで。

 その後、voiceドラマKIKIMIMIシアターっていうのに呼んでもらって。オンラインで稽古して、その後、5月にせんがわ劇場に出るので演出助手しませんか?って言われて、七井さんと三田村さんだし、「参加します!」って言って、演助で入って、でなんやかんややってる途中くらいで、これ(この作品)はこの(コンクールの)後どうなるんですか?って聞いたら、これはじては壮大な計画があると。もしも、うまくいってグランプリとか取ったら来年東京でできるので、そしたら客席編はここでこうで、それが上手くいかなかったときは、これがこうで、みたいな計画を聞いて、その時、客席編は七井さんが出るから、舞台編、客席編に一人づつ俳優を募集しようかという話で…そこからいろいろあって、今に至る、です(笑)。

 久野さんとはわりと、僕が一方的に知ってた期間は長いんですけど、最初の方は、怖い怖いというか、純粋やから怖いというか遠回しな言い方を絶対しないじゃないですか。それが怖くて、でも、話してるうちに、この人はこういう人なんやと思って。この人はそういう意味で信頼できると思って、だからこっちもそういうスタンスで関わっていけるしそういう印象ですね。僕は、実は最初は、作品が好きっていう入り方ではなくて、七井さんが好き!っていう。うまっ!て。そこから入って、久野さんの作品に関わっていくと、面白いな面白い本やなと。

 

 

階の稽古参加してみて。「なんでここにこの台詞が?!」

 

田宮  東京の芝居と違うなとかありますか?

関  東京と違うかどうかはわからないですけど、お芝居の創り方が、私が今まで参加したところとは違うなと。台本が全然変わらないじゃないですか。そこが感動してます。初回の稽古から台本がほぼ変わらない作品作りをしたのが初めてで。

田宮  そうですか?

関  できてない場合も多くて。だから、こんな変わらないんだ。台本を覚えるっている労力をしょっぱなに使い切って、後は自分の演技っていうものに対して集中できるんだということにびっくりしました。

田宮  それは久野さんの素晴らしいところですね。稽古の最初から台本があって。

稽古は、どうですか?舞台編の稽古の時に、いつも、「客席編の仕上がりが良くてね」て評判を聞いてるので気になってます。

関  不思議なバランスで稽古が進んでいます。不思議な感じです。

わりと繰り返し同じことをやってるはずなんですけど、発見するものが毎回違って、びっくりします。「まだここに考えるポイントがあったんだ」みたいな。

田宮  階の稽古は、僕も他のいろんな現場とくらべて特殊だなと思ってて。

あんなに長回しで、毎回全然違うことやってもいいむしろおんなじことやったら怒られるんじゃないか?いや怒られないけど(笑)…そういう現場ってあんまりなかった。まずそんなに長尺でやるとかミザンスを全く決めないとかないですし。

戸惑いとかありました?

関  3日間プレ稽古は台詞を入れる稽古だったんですけど、あわ吹きそうでしたね。

田宮  台詞がなんか特殊ですもんね。文体も。

関  なんでこの流れでこの台詞が来るんだろう、とか思ってパニクってましたけど

何回目かの稽古から馴染んでくるようになって、久野さんの感覚を掴むみたいなこと、言語をわかるみたいなことに、けっこう時間かかったかもと思います。今何が言いたいのかを理解したり、私は今ここまで理解していて、ここからが理解できないですっていうのを言葉にするのが、つまり、シーン以外のコミュニケーションに時間がかかったなと思いました。それがストレスとかではなくて、思い返せばいい時間だったなと思うんですけど、そこをけっこう丁寧にやってたかなと思います。

田宮  (稽古中)演技しないでしゃべる時間もけっこう長いですよね。

関  はいはい。

田宮  特に今回、駒さんっていう演出助手の方がついてくれてて、駒さんの言語化能力の高さはたまらないですよね。それ!それ俺言いたかったこと!っていうのが

関  たまらないです。久野さんと駒さんが考えてることが違うっていうのがすごく良くて、面白いと思う演劇が違っているっていうのがすごくいいバランスで我々としても稽古場に居られる感じが合って。駒さん凄い(笑)

田宮  点転とか舞台編とかを先に見ちゃってるから、あの人たちわりと普通にしゃべれるじゃないですか、本番でやってるの見ると。実際台本見ると、こんなん喋れる?ってなりますよね。

関  WSを一般の方とやった時に、なんでここにこの台詞があるの?って新鮮に驚かれてて、でも、私は何回目かの稽古でマヒしててそんな驚きは感じてなかったんですけど、たしかに、普通に読んだらそうだよなとそこでリセットされた感じがありましたよね。

田宮  慣れちゃってて?

関  あんまり慣れすぎるのもよくないなと思いました。言えちゃう台詞にしないほうがいいのかなと。

 

客席編の稽古。「七井さんは目も耳も倍ついてます」




田宮  七井さんはどうですか?

関  職人ですね

田宮  どういう職人?

関  七井さんてすごい目も耳も人の倍ついてる気がします。

田宮  ?

関  あ、そこ見てたんだとか、シーンの中でも稽古場でも。そこを聞き取って考えてくれてたんだというのがすごいんですよ、困った時とかに、さっと言葉を出してくれたりとか。

すごくわいわい積極的に助けてくれるとかではないですけど、ここぞという時にさっと手を差し伸べてくれる方だなと思います。

田宮  稽古場に俳優が他に七井さんしかいませんもんね。七井さんは、完全に「俳優」だから。俳優としての感覚の言語をぱっと渡してくれる。

関  すごいですよね。驚いたのが、ご自分がやられた演技に対して、ぜんぶ、何が起きてどうというのがわかっていらっしゃるようなことをおっしゃってて、びっくりして。私そういう客観的な目とかがたりないから、え?え?てびっくりしました。すごって。

田宮  最初七井さんとやると、この人何?みたいなことになりませんでした?

関  そんなことはないです。七井さんが出演されてた作品を見てたし。

 


舞台編の稽古。「俳優力を上げる」

 

田宮  僕は今七井さんのやってた役をやるわけなのでしんどいですよ

関  どんな感じですか?

田宮  舞台編の稽古は、今いろいろきめずに方向性を探すって感じですね。

関  稽古期間がすごいありますよね。

田宮  1年くらい

関  どういうモチベーションなんですか?

田宮  モチベーション的には、演劇の塾に通ってる感じ(笑)1か月に1回稽古があるから、できなかったことをできるようにするための時間がめちゃくちゃある。僕はわりと他の芝居も出ながらやってるので、稽古行くと、僕が今やってる芝居で課題は何?みたいな話になって、「こういうことが課題です」っていうと、「じゃあそれを解決しよう」っていう

関  (笑)

田宮  ぜんぜん作品の稽古じゃない(笑)

去年椅子の階に出演した時に、演出の中村さんが、「階作品は俳優がうまければ作品が面白くなるから、巧くなってね」って言われて、それが継続してる感じ(笑)

この長い稽古期間で俳優としてうまくなろうね、というモチベーションで僕はやっている。作品のことをずっと考えるというより、作品を使ってうまくなろうっていう感じ。最初の頃の稽古なんて、(相手役が)三田村さんでさえなかった。ずっと七井さんと稽古してた。

関  へえ。俳優力をあげるってすごいですね

田宮  そういう稽古もありません?作品の稽古だけど、俳優の稽古というか

関  俳優として、求められることが多い稽古場だなと思います。

田宮  ?

関  他の現場だと、あんまり俳優として自分がどうふるまうとかどう見えてるとかを、もちろん考えてはいるんですけど、そこまで考えることなく本番期間が始まっちゃうみたいな感じが多くて、こんなに、稽古の期間の特殊さもあると思うんですけど(※東京から1か月に数日来阪して大阪で稽古)1週間稽古して、そのあと3週間くらい空白の時間があって、また1週間っていう…短期間にばっと課題が出て、その後、今自分はここがこうなんだなというのを3週間くらいじっくり考える時間があって、また新しい課題が出てっていう、俳優としての自分みたいなのを常に考えることができるっていうのは初めてかもなと。

田宮  稽古の最初の方のダメ出しって、それ今どうなるもんでもないっていうか、小手先でできることではないダメ出しがあるじゃないですか。これはどうやったら解決できるんだろうねとか、小手先の技術じゃなくて、俳優としてここのこれをこうしないとな、みたいなことを考える稽古

関  そうですね。たしかに、だからこそ、どうしよう、ってなってた記憶がありますね。その稽古期間ではあきらめというか。それは今解決できることじゃない、ってわりきってしまうというか、そういうことが初期は起きてた気がしますね。

駄目出しを無理ってなるんじゃなくて、「そっか」て思って、「でも、今の自分には今を頑張ることしかできないな」ってなる。

田宮  レベルを上げなきゃ無理だなって。小手先の技で倒せる相手じゃないなって。

関  そうですね。でもなんか、初期から、「声が高すぎる」ってよく言われてて。最初は文字通り声が高いだけかと思ってたんですけど、稽古を重ねるごとに、声が高いっていうことの理由がわかってくるっていうか。「台詞の言葉を、文章としてなんとなくで発声してるから、声が高く聞こえてしまうんだね」と。「声が高い」を細分化していく作業が、稽古の中でできてきて、最初言われてた「声が高い」のほんとうの意味を、今ようやく知れるみたいな。

田宮  はははは(笑)ちょっとわかります。現象のダメ出しをされますよね。

「ここがつながったらいいよね」とか。こっち(俳優)的には、ただつなげるっていう方法論ではたぶん無理で、その原因が(他に)あって、それが分かってくると解決していく。楽しいですよね。

関  ああなるほどって思った時はほっとしたっていうか、ああ。そういうことだったのか。って。ようやくすっきりできました。

田宮  いいですねいいなあ。早く見たいなあ・

 

久野さんはどんな人?「演出家っていうより久野さん」

 

 田宮  久野さんはどんな人ですか?

関  難しい質問ですね。すごい純粋に観客として稽古場にいることが多くてびっくりします。いい観客。久野さんが創ってるものなのに、ちゃんと距離を置けるっていうのが。書かれた台本についてもそうですけど、いつも久野さんだけのものにしないって感じがすごく素敵だなと思います。「自分が書いたテキストだからこうなんだ」ではなくて、「こんな風に書かれてますけど、どうなんでしょうね」みたいな。自分で書いてるのに、そういう風な距離の取り方をしてる人をはじめて出会ったなと。

田宮  たしかに、これほんとに久野さんが書いたのかな?て思う瞬間がたまにありますよね。どっかから拾ってきたんじゃないかって。(笑)

小人さんが書いてくれるらしいですよ。台本ってどうやって書くんですか?て聞いたら、「小人さんが、朝になったら書いておいといてくれてるって。わりとガチなんですよ。「書いてて、ふっと思ったらできてて。私は、小人さんが書いてくれてるんだと思ってるんだよね」って言ってて。それなら確かにこの距離の取り方できるなと。

関  そうですね。演出もなんか不思議ですね。演出家とかっていうより久野さんだなって。久野さんとして稽古場に居て、指揮をとってくれるというか。その居方がすごく不思議だなと思います。

田宮  純粋すぎて怖い時ありませんか?「この人、そんな質問純粋にできるんや」と言うか、「マジで聞いてはる」というか

関  たしかに。

田宮  慣れるまで怖い

 

どんな稽古場?「具体的なダメ出しは最後」「謎解きのような」

 

田宮  点転に演出助手で稽古に参加して、(稽古場で)何回も見てるとだんだん意味がわかってくるんですよ。「ああ、こういう話?」って。最初ぜんぜん意味わかんなかったわって。

関  ああ。そうですよね。私も、(点転を見た時)わかんなくて。たまたまその回に大学の時の先生が来ていて、「面白かったですね。でも全然わかんなかったですよね」って二人で言って、でも、先生が、「(この作品には)ものすごくたくさんのことがちりばめられて仕掛けられてますよ」って言ってて。「へえ、そうなんだ」ってそれがすごく胸に残っていて。なんかその、ちりばめられたものを知りたいなって思える作品だった。

田宮  そうなんですよね。普通に台本としてモチーフの扱い方が上手いというか、探偵、それこそ、久野さん探偵好きじゃないですか、そういう謎解きのような感覚もあるし、喋ってることはよくわかんないしみたいな。でも、文字で読むより俳優が喋ったほうがすげえ面白いっていうか、文字で読んでも面白いんですけど、それで(点転で)すごい意味がわかる体験をしたので不思議な作品をつくる凄い人だなと思います。

関  演出助手で参加されてたところから俳優として関わるとなった時に、見え方が変わったとかあるんですか?

田宮  ああ。全然違うかもしれないですね、自分が演出とかもやりたいと思ってたのでああ、どうだろう具体的にどうっていうのはむずかしいな、あんまりないかもな。その時に今とあんまり変わんないという点は、みんながそれぞれ感想を言っていくって言う。久野さんが演出家として具体的に演出をするというわけではなくて。その時も別に、演助として何かをするといういわけでもなくて、ただそこに居て感想を言うというかそれは、今でも(俳優として参加する場合も)あまりかわらないじゃないですか。言語化して自分がやったことに対して、どうだったかを考えるみたいなことはあんまりかわないかも。でも(演助していた際)稽古後半にいくにつれて、缶をどういう風に扱うか、こうしたほうがいいんじゃないですか?みたいなことは演出的な立場で関わったかな。(コンクールで)「金の缶を真ん中に置きましょう」って提案したのは僕なんです!

関  おお(笑)

田宮  (笑)「これたぶん誰も気づかないかもしれないけど、缶一個置いた方がいいですよ」って七井さんに言ったりとか、缶を置いてラインを創るとかそういうのは稽古後半ですけどね。そういう感じのことって客席編でもありますか?

モチーフをどう扱うかとか。演出家ってそういう仕事をするじゃないですか。

関  ああ最初あったかなでも消えましたね。

田宮  ?

関  出てきたモチーフが消えてまあいっか、みたいな。

七井さんが紙飛行機を稽古で折ってて、(劇中のシーンでそれを)飛ばすのがきれいで、いいね、ってなってたんですけど、モチーフに頼りすぎてしまって、美しい紙飛行機にどう意味づけるかみたいなところに考えがいっちゃうよね、みたいなことになって、で、それがなくなってなくなってからあんまり、モチーフどうこうはなくなった気が。もちろん、椅子とか、チケットとかそういうアイテムは出てきますけどうーんあれ?モチーフ??不思議だなんの稽古をしてるんだ。

田宮  そう。そうなんですよ、それがすごいなと。

関  いっぱい稽古していろんなものを得てるはずなのに。なんだ?目に見えてわかる形できまってるものは少ないのかもしれない、こっちに積み重なってくるものは多いんだけど。でも、何が今あるんですか?って言われると

田宮  それがすごい不思議だなと思ってて。この前の(舞台編の)缶の扱いも、七井さんが考えてたのかわかんないんですけど、なんとなく、何回かやってたら、俳優さんがこんな風に缶を扱ってて、それはこういう風に見えるよね、みたいな話になって、それで最後じゃあ、こういうふうに置きましょうか、みたいな感じになってまあ、久野さんが決めたのかわかんないんですけど、なんかそれが自然な流れでやってたらそうなったみたいな

関  うん

田宮  そんな稽古じゃないですか。何も決めてないわけじゃないけど、とにかくやっていったらできたよね、みたいなような印象がある演助のときは、どうかかわっていいか分らないからとにかく感想を言う、みたいな感じでしたね。自分がこれまで現場で見てきた方法論と全く違うので。要は最後らへんになってようやく、具体的なダメ出しが始まるというかわりと最後の方で、ようやくあって、それぐらいのときに、缶、じゃあ、こうしましょうかとかいうことになって。

でも、他の現場だと、それっていちばん最初っていうかミザンスこうして、こうしましょう、じゃああと中身どうしますか?なのに、まず中身やって、最後の最後に、作品としてこう見えてきたんでって。久野さんが「わかった!わかった!」って「今のはわかりました!」ていうじゃないですか。久野さんが分かるために稽古してたんだな、って(笑)

関  (笑)

田宮  それがわかったから(今回)最初から不安なく参加できてますけど、わかってなかったら、かなり不安な気がします。何をどうしたらいいんだって。

関  うーん。(笑)

田宮  ありましたか?「わかった!」って。

関  いっぱいありました。久野さんが、「わかった!」っていって手を上げて。でも、たしかに、自分が論理的にわかったことは少なくても、久野さんが分かったなら身をゆだねられる感じはありますよね。「こんなに邪気なく、何かが腑に落ちたんだ、これで」って。

田宮  (笑)おもろいっすよね。この人が自分で書いたんだけどなって。

それ以上の情報量が詰まっていて。で、(稽古すると)分って。分かるとそれが具体的なことになっていくというかなんか、不思議な作品の終着点だなと。


もうすぐ京都公演。「途中を途中のまま上演できたら」

 

田宮  再来週ですよね。仕上がり的にはどうですか?

関  まだまだ発見してない所が、発掘できる部分がいっぱいある上演があったとしても、まだまだ発掘ができる作品だと思います。創作が完成しないだろうなっていうのは思ってて。でもそれはすごく、たぶん、関わってる人だれも完成を目指してない感じがあって、ずっと何かの途中で。途中を途中のまま上演出来たらいいなとおもいますね。

田宮  作品の話したいですね、僕の印象では客席編と舞台編って違う気がしていて。舞台編が、久野台本の中では異色だなと思ってて。客席編の方が、点転とか他の台本の構造に近いような。要は、モチーフが何個かあって、男の話も女の話も劇の話もあって、そこに向かってぜんぶが集約していく、みたいな。点転の時も、宇宙人の人が居て、死に別れた人がいて、それと全然違うところに点転の話があって、で、それが同じような話に聞こえてくる、みたいな。客席編も、劇の中の、聞こえなかった森の音の話があって、劇の話ー別れてしまって今隣にいない人、みたいな話とか、書き直されてしまった話とか別にい存在してるものが、最後の木の音に上手く流れていくみたいなイメージがあるんですけど、舞台編はわりとマジで劇の話をしてるだけというか。一応オチみたいなのはあるんですけど、というよりは、劇の話をただしているというような印象があって。客席編は映像とかみたことあるんですか?

関  ないです、

田宮  いいですね。

関  見ろって言われたら見ますけどって感じでしたね。

田宮  見てないほうがやりやすいですよ

関  積極的に観たいって言うことはないですね。台本をまず読む。最初読んだ時はやっぱりわからなかった。声に出してようやく、ああ。こういう文章なんだって。ちょっとだけわかりますけど、文字情報だけで読むと、それこそポエムみたいにして読んじゃうから、なんの話をしてるのか全くわからないと思ってちょっと不安にはなりましたけど。でもやっぱり稽古重ねるごとに、こことここがつながっていて、とかわかってくる。最初稽古してるあいだは、テキスト上のこことここがつながっていてという理解だったのが、重ねるごとに、普通の自分の日常のことと重なるって言うか、あ。この台詞はああいうことなんだなとか、そういう風に自分の個人のところに返ってくる感覚があって、それは、すごいテキストだなと思います。

田宮  最初読んだら(笑)、最初僕は映像で見ても全然わかんなかった。階は生で見ないと。全然感覚が。生で見たほうがいい気がする。舞台編のせんがわの奴を映像で見たんですけど、あれ?こんなんだっけ?と不思議な感覚がありました。

生で見た時の情報の多さとのギャップというか

関  なんでなんでしょうね。

田宮  それぞれの演劇にあると思うんですけど、わりと、喋ってる情報だけ聞いてても足りないということなのかなと。喋ってる意味内容がどうこういうだけじゃないのかなという気がします。


俳優としてのモチベーション「本番は異常」?

田宮  関さんは、舞台見に行く時に、「これ見たくなる」っていうのは何で決めてるんですか?

関  出演者と演出だけですね。

田宮  初めての劇団見に行くとかあんまりないですか?

関  口コミとか、それこそツイッターで見て、とか。よっぽど絶賛していて、その内容が自分の興味と合いそうだったら。

田宮  階はどうだったんですか?具体的な内容があれば、それをしゃべればいいなと思って。何が書いてあったら面白いですか?

関  そうですね。なんだろう。わりと、作品に関係ない事書いてても読んじゃうかも。俳優がどういうモチベーションで演劇してるのかなとか、この作品ではどういう演技法で演技をしてるのかなとか、俳優が何考えてるのかなとか、そういうのを読んじゃいますね。

田宮  ちょっとしゃべってみますか?それ。(笑)俳優のモチベションについて。


関  最初に言った通り、俳優が一番、演劇の面白いところにコアに関われるれるんじゃないかって思っているので、本番は、緊張しますけどだって異常事態じゃないですか。不特定多数の人にみられて拘束される、というか、それは異常だなと思うので、だから、その異常なことを、普通にやらないように頑張ろうって思います。これは本番の時の心構えになりますけど。

田宮  俳優は、本番をする、観客に見られるっていう異常さに、慣れないようにする?

関  そうですね。すごいことじゃないですか。本番を上演するって。その媒介者、スクリーン、じゃないですか。我々は、何かを投影するためのスクリーンで、それになるってすごい事じゃないですか。見てる人と何も変わらない生活があるのに。それを、おいといて、新たな、何かをインストールしてお見せするってすごい事なんじゃないかと思っていて、そのすごいことをあんまり凄くないように見えるから、でも、これはすごいことなんだよな、ということを思って本番に臨む

田宮  それは面白いですね。普通は、一般的に、そういうのを普通だと思えるように頑張ろうというか、当たり前のように舞台に立とうというかそういうモチベーションじゃないですか?そういうわけではなくて。

関  最近、ここ2,3回の稽古で、久野さんが、1個宇宙を創ってくださいっていうこの「間」の中にで宇宙を創ってくださいっていうことがあるんですよ小宇宙を広げましょう、みたいなことを言うんですけど、それを表現するのは難しいなと思いつつ、私達がすることって、そういうことなんだと思うんですよ。

田宮  宇宙を広げる?

関  そう、そういうことなんだな、って思いながらダメ出しを聞いてるんですけど、なんか、そうですね。

田宮  なんとなく、要は、自分が思う異常なところを自分の思う普通にしちゃだめってことですか?普通の延長線上にあるわけじゃなくてみたいな。違うか。さっきの説明がすごいわかったから、まあ、いいかな(笑)

関 稽古と本番って、使う筋肉が違う気がするんです。

田宮  そうなんや。

関  田宮さんはどういうモチベーションですか?演技メソッドだったりありますか?

田宮  なんですかねー。俳優。本番へのモチベーションは

最近マジで、さっきその、途中経過って言ってたのと割と近くて、「ただ本番がある」というか、「お客さんにみてもらう本番があります」っていう感じです。あれわりと真逆?真逆なのかな?

関  いや、でも、私はそれは両立してます。気持ちとしてはそちらに近いです。本番のために何かをするんじゃなくて、稽古の延長線上に本番というものがあるだけれども、一方で、本番というのは、非常に異常なものだと。

田宮  本番あんまり、好きじゃないんですよね…多分。

関  それ聴きたいですね。知り合いの俳優によく聞くんですけど、お客さんに見てもらう本番の方が好きって言う人の方が多いです。(田宮さんは)稽古の方が好きなんですか?

田宮  俳優のモチベーションとしては本番はなくてもいいんじゃないかなと思う。

関  へえ。

田宮  演出家とかにとってはお客さんがいることで完成するのかもしれないけど、俳優は会話劇だったら会話劇の、そこにどう生きるかということが大事だと思っていて。最近。お客さんにどう見せるかを考えるのは演出家だと思っていて。俳優ももちろん考えるんですけど…なんでだろうな…。いつまでもその台本にしがんでたいというか。本番って、出来があるじゃないですか。上手くいくとかいかないとか。で、上手くいかなかったのを見られる…とか。上手くいった上手くいかないがあるのが嫌?俺、なんで本番好きじゃないとか言ったんだろうな?言語化できてない。今初めて本番のことを考えました。どうですか?本番は。

関  私も苦手ではあります。やったことに対して、評価だったり、リアクションがあるのは、モチベーションにつながったりもするけれども、得意ではない。緊張するし。体調悪くなったりしても帰れないじゃないですか、ちょっと早退とかもできないので。その時間に全て、今私のある全てを捧げるのが怖い、責任があることだから、怖い。だから、安易に、「ずっと上演が続けばいいのに」とかは思わないですけど、やっぱり稽古だけだと賄えない部分が絶対あって。それは、不特定多数のお客さんというか、見知らぬ人に、

田宮  異常な!

関  そう(笑)だから、苦手だけど、<やーりーたーいーですー>という感じです。

田宮  たしかに、いま、聞いてて、稽古と本番はわりと別物としてとらえてるかもしれないと思いました。たしかに、本番をやるときのことって、わりと稽古から独立してるというか、本番は本番で一個また別の筋肉あれ、やべえ。全然まとまんない。演劇やってきてはじめて「本番」について考えました。なんでだろう。うーん。ちょっと三田村さんと七井さんにもききたいな。何考えてるんだろうな。

関  気になります。

田宮  本番についてどう思うか。そんなこと聞いたことないし、考えたことなかった。面白いな。でも、だから、本番が、5回で終っちゃうのが嫌なのかも。1年中本番やれたらすごい楽しいかもしれない。

関  すごいなあ、すごいですね。

田宮  稽古をしてるように本番が、稽古は稽古でそういう筋肉で稽古するわけで、本番は違う筋肉で本番をするんだとしたら、それって、それで終わっちゃうというか、筋肉使い始めで終っちゃうというか。「ようやく!」「おおお!」で終わっちゃうのが嫌なのかもしれない。そこだけを見られて評価されるというのが嫌なのかもしれない。だからすごく長かったら本番も楽しいかもしれない、と今話してて思いました。本番の筋肉をどう使うかっていう、本番の贅沢なことができたら。そこに俳優の面白さを見出してるかも。

関  「そこに面白さを見出してる」の部分をもう少し詳しく。

田宮  階の稽古はすごい楽しくて。毎回違うことができるしやってもいし、でも、その時自分が感じてた面白さというのが面白い、俳優をやってる時は。「その時」が面白いなと思って俳優やってます。その瞬間が面白い。本番はお客さんに見せるつもりでやらなきゃいけないなと思うんですよ。それもそれで楽しめるようになりたいんですけど。だから、階の稽古は楽しい。その日のあの体調の、あの時の感情、でしか起こらないことが楽しい。

関  私も、階の稽古に参加してると自分の今の身体の状態とかを強く意識するようになりました。私の身体を使って台詞を発するんだなということを強く意識するようになりました。

田宮  俳優はそれが面白いなと思って。その俳優の面白さが、見てる人の面白さに直結してるかどうかはまた別な気がするんです。この面白さってやる人のおもしろさ。野球をみるのとやるのと全然違うっていうか、そういうレベルの面白さの話で、俳優が好きなんだと思う。

関  なるほど

田宮  相手が何考えてるかわかる瞬間とか。特に階は、固有名詞がなかったり、どういう言い方をしても次の台詞につながるから、そういう面白さもあるし、逆にちゃんと台本を読んで意味を分かりながら台詞を言う面白さもあるけど、それらはきっとお客さんが見て感じる面白さではないのかな?と思ってて。

俳優としてお客さんへの面白さを担保する担保する?…その係は演出家の係なんだと思うんだけどなんか今そんなことを考えました。

関  なるほど。

田宮  先輩俳優がどんなことを考えてるのか気になる。特にあの二人は創り方が違うと思うので。

関  三田村さんとまだお会いしたことがなくて。お話ししたいです。



2023年1月5日 ZOOMミーティングにて



********************



東京公演『だから君はここにいるのか』【舞台編】【客席編】

■日時:2023年
 5/31(水) 19:30
 6/1 (木) 14:30 19:30
 6/2 (金) 14:30 
 6/3 (土) 13:30 17:30
 6/4 (日) 11:30 15:30


■チケット
チケットCHOFUよりお申込み



■脚本・演出:久野那美
■出演:【舞台編】三田村啓示(ヒーローに見えない男) 田宮ヨシノリ(缶コーヒーを持つ男)
【客席編】七井悠(三日月を背にする男) / 関彩葉(A-6の女)
■会場:せんがわ劇場
■料金:早割 3,500円 一般 4,000円 25歳以下 2,000円



→公演情報

→■俳優対談企画 2 七井悠(客席編)✕三田村啓示(舞台編)


■俳優対談企画 2 七井悠(客席編)✕三田村啓示(舞台編)


舞台編に出演する三田村啓示(41)と客席編に出演する七井悠(41)に、演劇について、作品について、稽古について、共演者について…語ってもらいました。缶々の階の創作現場や作品の雰囲気を知って頂けますと幸いです。

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出演の経緯

三田村  七井さん、ずっと一緒にやってますよね。久野さんと。

七井  そうですね。

三田村  何年目ですか?

七井  …9年目?

三田村  最初のきっかけは出演者募集みたいな?

七井  うん、最初は、普通に「缶の階」で、今僕がやってる客席編と舞台編と…

三田村  ああ、あれが最初? 初演も出てるの?

七井  そうですね。

三田村  ああ。僕、初演は舞台編だけ観てるんですよ、何故か。昔の、南船場にあったころのサザンシアターで。

七井  舞台編は観てはるんですね。

三田村  観た観た

七井  ウイングフィールドに行った時に、久野さんの、階のチラシを見て、応募しようかなと。それまで全く久野さんのことも知らなかった。

三田村  募集チラシね。今もあるけど、今は募集もSNSでって感じだから、なんか時代を感じますよね。

七井   あんまり引きがなさそうな印象が(笑)

三田村  でもそのチラシになんか惹かれるものがあったってこと?

七井  うん、長い時間をかけて作品作りをするって、それがすごく僕もその時劇団をやめていたので(劇団時代のような)「公演決まりました」「やります」「決まりました」「やります」ていう、<やるからやります>っていうそういうのではない、もうちょっとこうじっくり創りたいなっていう思いがあって。自分もこれから俳優としてどうする? って思った時に、まあ、なんかしっかり創ってみたいなという気持ちがあったので応募したのを覚えてますね。

三田村  たしかにそれは(長い時間をかけて作品作りをするのは)特徴ですね。

七井  久野さんのね。

時間をかけて創作すること

三田村  長く時間をかけてじっくり創ることの意義みたいなものって、個人的にはこの12年でその価値がようやくわかってきた気がしていて。

七井  それはどんな感じ?

三田村  ここ1,2年、特に、助成金的なものとかのタイミングにあわせて、駆け足で創作するみたいなことがそれなりにあって、それはそれで否定はしてないんですけど…なんていうか、単に年齢的に短期決戦にバテてきたっていうのもあって…

七井  時間をかけたほうが性に合うってこと?

三田村  一定の勢いが持続していく中で創っていくみたいな短期決戦のいいところもあって、思えば長らくそういうスパンの中で演劇をやってきた気もしますけど、なんか、たまには、寄り道したりうろうろ散歩したりっていうのがしたいなと。もう、いい年ですから、そっちの方がなんか(今はいいんじゃないかという気分です)。まあもちろん、それぞれにそれぞれの良さや難しいところはあるんやけど。

七井  三田村さんは、僕が知らないようなところによく出てはる印象ですけど、時間をかけてっていうのはやっぱり少ないんですか?

三田村  半年くらいってのはなかなかないですよ。

七井  俳優としては僕はすごいありがたいなと常々思ってます。いろいろできるというか。

三田村  そうそう、なんか、無駄なことたくさんできることのよさみたいなのはありますよね。

七井  それは。

三田村  イチローも同じような事言ってた。忘れたけど。

七井  無駄をしないと、って?

三田村  うんうん。

七井  無駄もできる、余裕がある稽古場?

三田村  うん。台詞とか段取りに追われることなく。

七井  それはある。

三田村  なんか世の中の流れが速いじゃないですか。せめて演劇くらいは遅く行こうや、て。そういうのもあるかもしれない。今僕の中で。

七井  ああ。

相手役について

七井  三田村さん相手役が田宮君に代わるじゃないですか。どんな感じ? 手触りとか違いますか?

三田村  やっぱり違いますね。当たり前やけど。まず年齢が、全然違いますから。ガッツもあるしフレッシュやし。

七井  あーフレッシュ。

三田村  なんていうかな…コンクールの時とか大阪公演で七井さんと組んだ時とは違う頑張り方でも成立するかなっていう気がしていて。

七井  あーそうなんや。

三田村  七井さんて、この、ぶわーんとしてるじゃないですか。芝居が。

七井  あははは(笑)

三田村  ぶわーんて。いい意味で。ぶわーん、ぶわーんていう感じやけど。

七井  はい、はい、わかります。

三田村  田宮君はもう、がっ!がっ!がっ!って(笑)感じやから。七井さんがぶわーんとしているから、僕はせんがわのコンクールや大阪公演の時は若干がっ!がっ!がっ!って感じにしてた節はあったけど、そこまでやらんでもと…なんかアホみたいな会話やな(笑)がっ!がっ!がっ!ってもっと、適当にやるというか。

七井  ゆるっと?

三田村  そう。ゆるっとした感じでも成立するかもしれない、とか。思いながら。

七井  ぶわーんとしてるって面白いですね。

三田村  ぶわーん。うんでも悪い意味ではないよ、もちろん。

七井   (笑)

三田村  ぶわーん、ぶわーん、ぶわーん

七井  確かに、(相手役が変わると)芝居の成立のさせ方は変わる

三田村  変わる。東京の舞台編に関しては、まあ、せんがわと大阪、七井さんとやった時とはできるだけ、僕としては、なんか、違うやり方で、成立させたいと思う。
で、そちらはどうですか? 共演者、関さん

七井  関さん、非常になんか、めっちゃクレバーな人だと思うんですよね。

三田村  クレバー? どういうクレバーなんですか? めちゃくちゃロジカルとか?

七井  どういうクレバーあのぶわーんとしてるっていう三田村さんの僕への表現があったじゃないですか。関さんもおそらく若干ぶわーんとしている

三田村  ぶわーん同士?

七井  ぶわーん同士だと僕は思って、まあ、そこは客観的にはわからないですけど。
(稽古場で)久野さんが、「なんで今そういうことしたんですか?」とか聞いた時の答が、ロジカルというかダメ出しの言葉を受けて、「こうこうこういうことだから、こうして、こうなった」であったりとか、久野さんがたとえば、今のはあんまりよくないなという感じで「何が今できなかったか」を訊いた時に、「おそらくこうこうこういうところがひっかかってるんだと思います」っていう、その、すぐに自分の中で「何をしたか」とか「何が起こってるか」とかいうことを言葉にできる。そして、じゃあそこを、演出家や僕らと話し合って、「こういう方向なんじゃないか」となった時に、きちんと自分の中で実感を持って納得してできてるというか

三田村  うんうん。

七井  納得するまでにも、「これはどういうことですか?」とかちゃんと聞く。そういうところがすごいなと思ってる。だから稽古のスピードがけっこう速いです。
僕が初演やったのは8年前でその後に再演やって、一応今回再再演にはなるんだけど今回、久野さんの、台詞? 言葉が、前に比べると僕の中だいぶいろんなことがクリアになってきたなと思っていて。理解であったりとか、どういう風に組み立てて喋るかっていうところの、自分の中で納得のいき具合が、けっこう、ちゃんとしてきてるなっていうのが大きな印象としては、ある。

三田村  まあ、久野さんも、久野さんなりに成長したし。

井  ははは(笑)まあ、成長っていうか…8年ありますからね、お互いに。
自分の中の、戯曲に対する理解も絶対変わってるでしょうからそれはすごくもちろん、今まで2回やったのとは違うようにしたい、成立させたい作品をっていうのもある
舞台編って、登場人物、だったものと、俳優がまあ、問答を繰り広げて、わりとストレートな話っていうか、質問と答、そして最後にこういうことがあったっていうすいませんざっくりとした言葉遣いなんですけど。
客席編って、答と質問を、こう投げかけたりするんですけど、いや、それに対してはこうだろうというなんというか、会話として、質問、答、だけじゃない部分がある。ものすごく在ると思ってまして。それが、登場人物ー今回僕登場人物なんですけどーの背景とかがあって、お客さんで来る女の人の背景とかがあって、でもそれがあんまり明示されなくて、あ、そういうことがあってそういう思いがあるからあれだけわしゃわしゃやってるのかな、みたいな、なんていうか、舞台編よりすごく大雑把な言い方をすると、すっきり、しないという風に僕は客席編を考えてるんだけど、そう考えた時にも、関さんの演じる女性の、その、言葉の発し方というか、「何でここにきて、なんで今回の芝居にこだわろうとしているのか」ていうところの部分が、わりとこう、明確にやってくるというか、

三田村  ふーん。

七井  勢いだけでポンポンとではなくあれ、勢いだけでやろうと思ったら会話、できると思うんですけどそうじゃないところで、台詞をこう、発してるって感じがやっていて感じます。

三田村  へえ~。

七井  たしかに、三田村さんがさっき言ったように、過去の、片桐(慎和子)さんも中村(彩乃)さんも、がっ!がっ!がっ!ボン!ボン! というタイプといえばそうかもなと思わないでもないですね(関さんは)ボン!ボン! してるのと違う感じのなんか聞こえ方というか説得力のある台詞の出し方をしてはるなと

三田村  へえー、なるほど。

七井  すごいな、と思ってます。

三田村  ここまできたら普通に、客として(客席編を)観に行こうとしてるので、僕は。だから楽しみですね。姉妹編に完全に客として観に行く。変な感じやなと思う。

どんな作品?どんな風に見て欲しい?

七井  客席編は、過去に上演された作品があって、その作品を、過去に人生で一度だけ演劇を見たお客さんの女性が居て、その人が、過去に見た作品がもう一度上演されるというので見に来た人。で、僕のやる役が、過去に、登場はしたんだけれども脚本家が途中で書くのを止めちゃって、演出家がその作品を別の作品のように仕上げてしまった、その作品に登場していた登場人物。で、今回、その登場人物が、きちんとした作品ー演出家が勝手に創った作品ではない作品としてー上演したいといって再演しようとしている。で、そこに、さっきの、過去に一度だけ劇を観た観客の女性が見に来るっていう
どんな物語かというと、劇場の客席が舞台で、登場人物ひとりで劇を再演することはできないので、じゃあそれはなんなのか? とか、どういうことなのか? とか、というところから話が始まると言ったらいいでしょうか。僕は、過去の作品をもういちど違う形で再演したいと思っている登場人物で、客席の彼女は過去の作品をもういちど同じ形で見たいと思っている観客。そのふたりが、「なんで再演されないのか?」ということに関してしゃべっていくというかいろいろ話をしていく物語ですね。

三田村  うん。そんなんやった。気がする(笑)。僕は客席編は、初演は観てなくて再演は観た。そんな精密に覚えてるわけではないんだけど…客として普通に面白かった。

七井  おお。それはありがとうございます。

三田村  磨きぬかれたいい台詞がたくさんあるなあと思った。ってすごい素人みたいな感想やけど(笑)。なので、久々に観られるのがなんか楽しみですね。

七井  僕の感じで言うと、いい台詞がけっこうあると思ってて、それが、直線で並んでるんじゃなくて、いろんなこう、カタマリごとにいい台詞があるなという感じがしていて。それを、きちんと会話として成り立たせることが、前回、前々回も難しかったような気がしていて。

三田村  なんか覚えてるのが、誰もいない森の中で倒れた木の話! なんかそれをすごい覚えてる。

七井  「誰も居ない森の奥で木が倒れた。その時音はするのか」
直接的に自分のことを喋ってるわけじゃなくて、劇の中のことを喋ってるんですけど、二人それが、抽象度が高いていうが若干こう広がりのある台詞それが、客席編は舞台編より多いと思っていて、しかもそれがいろんなとこにあるからそういう言葉がちゃんとお客さんに聞こえるようになったらお客さんがそしたら、こう、おうちに持って帰って、ああいうことかもこういうことかもっていろんなところから想像がやってくるような見方ができたら面白いんじゃないかなと思ってるんです。

三田村  すごい情報量。抽象的情報量が多いよね

七井  そう。めちゃくちゃ多いでしょ。正解というかたとえば、上演をもう一回見に来た客席編の女性はなんで来たのかとか過去とか背後に何があったのかとか明示されないのであ、なんで来たのかは言われてるかなんでそんな一生懸命な原動力で、もう一回見たいって言うのかとかわりとほわっとした感じで説明されてるのでそんな抽象的な広がりのある言葉を、うまく届けられるようにしたいと思うんですよね。

三田村  この作品、「どんな風に見ると面白い」んですかね。

七井  あんまり、決めつけないで見たほうが面白いんじゃないかなという気がします。いろんな方向に言葉とか台詞が広がっていってるので。聞こえてきた台詞が、「あ。これがいいな」「あれがいいな」「こういうことなのかな」ってつながっていって、それで終わっていい、みたいな。舞台編はどうなんですか?

三田村  舞台編? 舞台編は物語は…まずは演劇公演の準備前の劇場で、劇場の舞台が、そのまま劇場の舞台としてある。で、仕込みとかもガンガンにやるような、まだ新人というか、下っ端なのかな、という若手俳優が一人で前乗りして舞台にやってくるんだけど、その目の前に、その俳優が演じるはずだったけど(台本が)書きかえられてなくなった役の台詞をすごく正確にしゃべる男が現れると。で、その男は実は、書きかえられた劇に結局登場しなかった登場人物そのものらしいんですね。そしてその登場人物と、当初はその役を演じるはずだったらしいその若手俳優が奇蹟的に出会ってしまって、なんでこんなことになったのか、などについていろいろとしゃべるという。とにかく、いろいろとしゃべるっていうのがポイントなんですよ(笑)

七井  そうそう、たしかに。

三田村  としか言いようがない。で、僕はその、いろいろ書きかえられて結局劇に登場しなくなっちゃった登場人物という役をやるという感じです。
そっち(客席編)もいろいろとしゃべるんでしょ?

七井  そうなんです。帰ったらいいのにと思うんですけどいろいろとしゃべるんです。

三田村  そうそういろいろとしゃべる。

七井  隠れちゃえばいいのにと思うんですけど、いろいろとしゃべるんです。

三田村  そう、いろいろとしゃべる。

七井  それ、肝ですよね。

三田村  舞台編に関しては登場できなかった登場人物の話でもあるので、…このコロナ禍で延期になったり中止になったりした演劇やその演劇の登場人物のことをどうしても、重ねますよね。重ねるなあと。やってる側も、なんか、重ねちゃってやってるところもあったかなと思うし、そういう見方もできる作品だなと。中止になった作品の登場人物のことを考えますもん。

七井  コロナ禍で、中止になったもの、あったんですか?

三田村  いや、意外と自分の現場は完全な中止は今のところないんですけど、延期は、1回あったかな。
あとはまあ、知り合いとかがやってる舞台が、途中から完全中止とかもあったし。

七井  完全中止!?

三田村  そういう時、「あの登場人物は」って、思いますよね。そういう視点で見れるものでもあるなあと、改めて思いますよね。

七井  特に舞台編は、演劇してる人は、いろいろ感じるというかね

稽古場はどんな感じ?「部活感」「ホールド力」

七井  どんな稽古場ですか? 田宮君どんな感じでやってるんですか?

三田村  元気にやってる。

七井  元気に()

三田村  いや良いことだよ、元気に。七井さんみたいにすぐ寝っ転がったりしない(笑)

七井  ちゃんと、こうなんかガシガシとやってる?

三田村  ガシガシとやってる()

七井  三田村さん寝っ転がらないですよね。なんでですか?

三田村  なんでって言われても、そんな理由とか考えたことない。むしろなんでそんな寝っ転がるん?

七井  疲れてんのかな、もしかして。

三田村  昔からよく寝っ転がっとるやん()

七井  なんかあるんでしょうね、僕の中で。

三田村  とりあえず寝っ転がっとくというか。

七井  寝っ転がりながら、演出の言うことを聞くことで、きちんと聞けるというか。たぶん普通は怒られるんでしょうけどね。理解、というか、なんか面と向かって「はい、聞きます!」って感じは、ちょっと違うような気がする。

三田村  違うの。

七井  はい(笑)へえーと思っちゃうかも。「なんか言ってるわ」、みたいな感じ。冷静になりすぎるというか。

三田村  だから寝っ転がるの?

七井  たぶん集中できないんかもしれないですよね。

三田村  寝っ転がってるほうが集中できるということ?

七井  たぶん。

三田村  なるほどね。まあ、いろんな人がいるからね。

七井  田宮君は、寝っ転がるそぶりとかは全然なしなんですか?

三田村  寝っ転……? そりゃ和室とかでやったら寝っ転がるかもしんないね()
まあ、とりあえずやりたいように、今はまだネタ出しみたいな段階やなと。なのでまだこれからです。

七井  本番まだ先(5月末)ですもんね。

三田村  なにができるやろ、みたいな。別に全く何も特に固めていないので、お互いに。なんやろ、部活やね、まだ。いい部活感。

七井  楽しくやってる、みたいな。

三田村  うん。なんていうんかな、何何区民演劇会みたいな感じやね。いや、いい意味でですよ。

七井   () 地域の発表会的な?

三田村  発表すら前提としてないというか。そういう時間が贅沢やわなって思いながらやってます。

七井  なるほど。
久野さんってどんな演出してはります?

三田村  どんな演出?

七井  久野さんなんか言わはったりするんですか、

三田村  今はあるとしたら、主に田宮君に対してって感じかな。主に音の話、ですかね。

七井  セリフのこの(手を上下させるジェスチャー)…

三田村  うん、なんか音が(手を上下させるジェスチャー)ぐわんぐわんなってるのを何とかしようとか。あと、せんがわと大阪公演の時は、なんで七井さんは缶コーヒーをあんなにぼろぼろ落とせていたのか、みたいな。(田宮くんは)「あんなにぼろぼろ七井さんみたいに落とせないっすよって」って。

七井  あはは()

三田村  ああ、そうなんやーって。あんまり考えたことなかったけど。

七井  落とすのって冒頭に落としてたやつですよね。あの、あなたが、しゃべってて…

三田村  ぼろぼろぼろぼろ、って落としながらしゃべってる。あれは実はすごかったんじゃないかって。

七井  へえ、それ面白いですね。田宮くんの持つ缶コーヒーの数が僕より増えたとか。

三田村  ホールド力がなんか。七井さんて実は手短いんちゃうか、みたいな話にもなったりした。

七井  あーそうかもわからん…

三田村  ホールド力がやっぱり。

七井  腕の方まで行ってなくて、手でなんとかしようとしていた感あった。こっち()まではいってなかったから、数はなかったかもしれない。

階作品について。「登場人物に落ち着きがない」

七井  三田村さんが最初に、いわゆる階の作品に出演したのって?

三田村  「点の階」です。

七井  あ、あの囲碁の。

三田村  の、初演。

七井  あのときは、久野さんからオファーがあった、というか。

三田村  そうそう、でもその前に僕がC.T.T.(コンテンポラリー・シアター・トレーニング。演劇やダンスなど舞台芸術の人材育成を目的に試演会などを運営していた組織の大阪事務局で事務局員してた時に、久野さんが参加団体として来て、そこで知り合って。

七井  ああ、

三田村  そこで片桐(慎和子)さんの一人芝居(「それは、満月の夜のことでした」)を上演されていて。

七井  月が転がってるやつですね。

三田村  それを観て、この「缶の階」の初演と再演も観て、普通に客として。とても独特なテキストだなーという感じで印象に残って。その印象は今も一緒ですけど。

七井  どう独特? 

三田村  なんでしょうね、すごくまあ安直に言っちゃいますけど哲学ですよね。

七井  そういうのを想起させるような言葉が(ある)。

三田村  むずかしいことをやさしく言おうとしているというか。アウトプットとしてはやさしい。でもやっぱり一筋縄ではいかないしむずかしい。「難しいけど易しいけど難しい…」のループみたいな。

七井  語ろうとしている、語られていることはめっちゃ広いわけではなくて。もちろんそこには行くけど、起こってる事象? そもそもきっかけになっていることというのは、当事者、その人でしか理解できないというか、その人だけに起こったことに限定されていることで、「易しく」書かれているということになるのかなとの話を聞いて思いましたね。

三田村  まあ、確かに。

七井  別に、論として全面展開しているわけではないじゃないですか。「正解はこうあるべきだ」みたいな。

三田村  そう、大上段に構えていないというか。目線が高いわけではない。

七井  うん、難しくないんだけど、でも難しいってことに(つながるのか)…

三田村  出てくるやつが、頭がいいのか悪いのかわからないてのもあって。

七井  ()

三田村  それもあるかもしれない。

七井  それはすごくいい言葉ですね()

三田村  皆頭の回転が異常に早くて、この速度でこんな理屈言えるのか人間? って思うけど、でも、どうも頭がいい感じはない。どこかヌケてる。彼らは頭がいいのか悪いのか? 変な感じ。

七井  確かに観てたら変ですね。

三田村  皆めちゃくちゃ頭いいやんって思うけど、「ええええ!?」って言ったりするし、なんか…あまり落ち着きがない。

七井  ああ、全体的に落ち着きがない()

三田村  でてくるやつ全員、落ち着きがない。

七井  多方面向いて話しますしね。落ち着きがない。

三田村  結構テンパってる。

七井  大変な状況にすぐ陥る。

三田村  大変な状況にいる人が多い。こんなに頭がいいのに。頭の回転がこんなに早いのに。そんなもんだよって言いたいのかもしれないけども。

七井  たしかにそうですね。

三田村  役者はそこのすり合わせが大変ですね。

七井  この速さでその言葉はあまりない、出てこないな。展開というか、ね、語尾があまり会話体じゃないじゃないですか。「~です」とか。

三田村  かつ、久野さんも語尾こだわりの人じゃないですか。

七井  語尾こだわりの人。

三田村  語尾だけじゃないんですけどね。

作品の楽しみ方「直感的に!」

七井  観るときも、「難しくなくて易しいんだけど難しい」ぐらいの気持ちで観たらいいと。複雑にこんがらがってみるというよりかは。演る側としてきちんとお客さんに言葉を届ける必要はあるんですけど、見る時は、「この人たちは頭がいいんだか悪いんだかわかんない」というか、それくらいのスタンスで観てもらった方が、伝わるというか、言葉が入ってきやすいんじゃないかなって思いますよね。

三田村  そうだね。「抽象度の高い難解な哲学的なセリフで知られる」…みたいな、そういうイメージを一見持たれるかもしれないですけど、<ただただ無駄に頭のいいやつらがテンパっているさまを生暖かーく見守る演劇>なのかもしれない。

七井  マルクス兄弟…

三田村   () なるほど、そういう楽しみ方が一番いいのかな。

七井  考えて観ずに。

三田村  一見頭でっかちに見えるかもしれないけど、そこまでめちゃくちゃ頭使って稽古してないから()

七井  ()

三田村  まあ、それは言いすぎかもやけど。論理より感性重視というか、瞬発力というか。

七井  ちなみに、三田村さんは僕とは頭の使い方違うと思うんですけど、三田村さんは久野さんの所だと、わりと適当にほわんほわんって感じでやるんですか?

三田村  適当にほわんほわんか……。いや、でも、その言葉を借りるなら僕は適当にほわんほわんとやることの面白さを階で見出した気がする。ミザンスとかがちがちに組んで創っていく現場じゃないからってのもあると思うけど。

七井  結構、僕から見てたら、三田村さんってテキストの文字、というか言葉をすごくきちんと言わはるところから入ってんのかな。

三田村  そうね、それはまあ、あると思います。ちゃんと戯曲の言葉を届けないと、っていうのはある。久野さんは台詞に関しては厳密に発してほしい人だからということもある。けどそっからまた崩すみたいな。でも崩しすぎてはいけないからまた引き戻す。というかまず、崩すところまでできる期間があるというよさがある。

七井  そういうことについて話し聞いたことなかったので。

三田村  適当にやるのが、いいのかな…適当にやる、って言ったらイメージそんなに良くないですけど、台詞の質や量に惑わされずに、ラフに、適当にやるぐらいで久野さんのテキストって開かれるのかもしれないとも思ったり、僕にとっては。
適当って何なんやろな、ようわからんけど。適当にやることを真剣にやる……適当って言葉を言い換えると、あらかじめ事前に決めすぎずに、いかに柔軟な体と心で一回一回の稽古なり本番に臨めるかってこと、なんかな。まあどの演劇にも当てはまることではあるんだけど、階の現場はそれを普段よりすごく意識的にやる、そういう状態に自分をもっていく必要があるというか。

七井  割と直感的にこうだと思ったことを大切にしてほしいですね。

三田村  素直に、構えずに。

七井  そう。素直に感じたのをそのままね。

三田村  一見演劇論的な二本立てじゃないですか。…舞台、客席、観客論でもあり…演劇の「上演」とは、みたいな二本立てで、演劇っていう形式に親しみがある人にはまず楽しんでもらえると思うんですけど、両方とも抽象度がいい意味で高いので、それに留まらない作品としても観られると思うんです。せんがわのコンクールの松井(周)さんの講評にもありましたけど、「社会の中でみないようにされている人というものに対して想像力が広がる戯曲だった。レイヤーの幅にもうならされました。演劇というものの神や精にも思いをはせる時間かもしれない」という。今まるまる引用しましたけど()、すごく素敵な観方をしていただいたなと。その通りだなと。これは舞台編の講評ですけど、客席編にも当てはまる観方だと思いますので、まず素直に観て、観られる方それぞれが捉えられるレイヤーに応じて、いろんなものが観られる作品に、二本ともなっているんじゃないかと思います。

七井  そうですね。

三田村  すごい今ちゃんと言うたね()

七井  ありがとうございます()。そう僕も確かに思います。

三田村  客席編は外から観るけど、舞台編は出てたから、何とも。でもそういう感じやと思う


2023年1月3日 ZOOMミーティングにて



********************



東京公演『だから君はここにいるのか』【舞台編】【客席編】

■日時:2023年
 5/31(水) 19:30
 6/1 (木) 14:30 19:30
 6/2 (金) 14:30 
 6/3 (土) 13:30 17:30
 6/4 (日) 11:30 15:30


■チケット
チケットCHOFUよりお申込み



■脚本・演出:久野那美
■出演:【舞台編】三田村啓示(ヒーローに見えない男) 田宮ヨシノリ(缶コーヒーを持つ男)
【客席編】七井悠(三日月を背にする男) / 関彩葉(A-6の女)
■会場:せんがわ劇場
■料金:早割 3,500円 一般 4,000円 25歳以下 2,000円



→公演情報
→■俳優対談企画 1 関彩葉(客席編)✕田宮ヨシノリ(舞台編)

■出演者・作品紹介■インタビュー『だから君はここにいるのか』【客席編】



『だから君はここにいるのか』【客席編】
■脚本・演出:久野那美
■出演:七井悠(三日月を背にする男) / 関彩葉(A-5の女)
■会場:
THEATRE E9 KYOTO

■日時:2023年
 1/13(金) 20:00    
 1/14(土) 14:00 / 18:00
 1/15(日) 13:00

→チケットはこちら
作品や出演者について、出演者と演出部にインタビューしました。
観劇のご参考に。




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七井悠(三日月を背にする男役)


    自己紹介をお願いします   
→京都の劇団飛び道具に所属しています。41歳。エンターテイメントな作品よりは、所謂 会話劇 な作品に出演しています。

   この公演に参加した経緯を教えてください  
→8年前の初演時、自分が所属していた劇団を辞めて今後どのように演劇をしてゆこうか考えていました。ピッコロ演劇学校に入って、そこの同期がウイングフィールドで公演をした時があり、それの手伝いで劇場に入った時久野さんの、階の出演者募集のチラシ(※注 今回の作品の初演時のもの)をみてそれに応募しました。久野さんのことは全く存じ上げていませんでしたが、長期間かけて作品を作る、というコンセプトに惹かれての応募でした。


     作品について教えてください  
→昔一度だけ劇を観た観客と、その劇の登場人物 二人による会話劇なのですが、二人の背後にいる劇作家と演出家について考えるような作品だと思っています。

      七井さんの役はどんな役ですか?  
→過去に上演された作品が演出家によって台本を改変され自分の寄って立つものを奪われてしまった(と思っている)、劇の登場人物です。


    共演者の関彩葉さんについて教えてください   
→とてもクレバーな方だと思います。演出の久野さんと演技について話をしているところを見ても、きちんと自分の中で理論・筋道を組み立ててその上で、同じ土俵で話をしている。演技も、何かの在りように固執せず、柔軟にやられているのがすごいと感じています。


    稽古のエピソードを教えてください   
→演出助手で関わってくださっている駒さんの分析力が本当にすごい。稽古をして今何が起こったか、ということをいろんな位相をきちんと腑分けしてしゃべってくれる。彼女は音フェチだと勝手に思っています。


    この作品のおすすめポイントはどこですか?   
→とにかく劇の言葉を聞いてほしい。筋道が綺麗に一つに収斂されてゆくような会話が行われているわけではないですが、劇の言葉がいろんな方向へ飛んでいることで、自分の無意識の扉?のようなものをちょっと開くような観劇体験ができるのではないかと思っています。


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関彩葉(A-5の女)


    自己紹介をお願いします 
→1999年生まれです。主に東京で俳優として小劇場の舞台作品に関わったり、関わらなかったりしながら生活をしています。

   この公演に参加した経緯を教えてください  
→オーディションに応募致しました。 
『点転』と缶々の階『だから君はここにいるのか【舞台編】』をみて、どちらもなんだかわからないけど面白いと感じました。
そのわからなさは「突き放すわからなさ」ではなくて、「わからないからもっと知りたいというわからなさ」でそこに魅力を感じておりチャンスがあれば創作に関わってみたいと思っていました。

     作品について教えてください  
→ある劇の登場人物と、劇をあまりみたことがない観客との異色のマッチメイク、スペクタクル会話劇です。

      関さんの役はどんな役ですか?  
→A-5の席に座る観客です。

    共演者の七井悠さんについて教えてください   
→感覚が鋭くそれに対してに責任を持つことができる俳優だなと尊敬しています。
その感覚を内部に収めずにコントロールをして表出する力を感じます。
言葉と身体のバランスが絶妙です。

    稽古のエピソードを教えてください   

→久野さんがご自身の戯曲に対して自然に距離をとって考えてらっしゃることが印象に残っています。
俳優と割と近いところで「この台詞はなんなんでしょうね」「なんでこのセリフが出るんでしょうね」と探偵のように推理をして自分なりの答えを誰よりも無邪気に発見されるのが不思議で新鮮でした。

稽古場ではシーンの稽古をする時間と同じくらい考える時間が多いです。
一つ物事に対して考えることもあれば各々が各々の問いに向き合って、結果として一つの解を導き出したりすることがあります。
階の稽古場を通してユリイカの喜びを知りました。

    この作品のおすすめポイントはどこですか?   
→この作品は約60分の上演時間ですべでが完結するわけではなく、上演が終わってからも劇が膨らんでいく作品だと感じています。稽古で何度も通しをしているのに通しをするたびに台詞の意味が変わってきこえて、いつのまにか自分の生活のことを考えています。
上演を見ていただいた方にもそんな風に終わりなく作品を楽しんでいただけたらと思います。





************

久野那美(脚本・演出)


    自己紹介をお願いします 
→脚本と演出を担当しています。1時間くらいの短い会話劇を創ります。不条理劇と分類されることが多いです。


   この公演に参加した経緯を教えてください  
→第12回せんがわ劇場演劇コンクールでグランプリを受賞し、2023年5-6月にせんがわ劇場で受賞公演を行うことになりました。
受賞公演では『だから君はここにいるのか』【舞台編】【客席編】を上演する予定ですが、その前に、大阪で【舞台編】(2022年6月)、京都で【客席編】(2023年1月)を上演することにしました。

     作品について教えてください  
→舞台編と同じく、登場人物の話です。
登場人物と観客の話です。
そして、物事がいい感じに進んだり伝わったりする過程で人知れず葬られてしまう、<そもそもの始まり>についての物語です。
きっと。


    出演者の七井悠さん、関彩葉さんについて教えて下さい    
→お二人とも、
直感的で柔軟、かつ、「自分が感じたことをあくまで言葉にしたい(できるまですっきりしない)」タイプだと思います。
なので、稽古場は言葉にならないものと誰かがひねり出した言葉とがいつもせめぎ合っています。


    稽古のエピソードを教えてください   
→前回の稽古で、
「ポエムにならないためには、言葉(の表面)に流されずに、「待って」と、いったん思いとどまって言葉を使う立場を明確にすること」という意見が出ました。これは、とても重要なことだと思います。
今後の課題です。




    この作品のおすすめポイントはどこですか?   
→演劇をモチーフにしていますが、演劇はあくまでたとえ話であって、いろんなことに還元出来る話だと思うのです。
コミュニケーションの話であり、伝達の話であり、何かの始まりと終わりの話であり…
自分のことにひきよせて見てもらえたらと思います。
同時に、「演劇」という素敵なシステムに思いを巡らせて頂けたら嬉しいです。



駒優梨香(演出助手)


    自己紹介をお願いします 
→駒優梨香です。企画団体〈世界平和〉という団体に所属しています(もうすぐ改名します)。主に京都で活動しています。24歳です。作演をよくやります。明らかにファンタジーな世界ばかり作っています。外部では演出助手でいることが多いです。

   この公演に参加した経緯を教えてください  
→2019年に階のえんげきWSに参加して、色々と衝撃を受けたのがきっかけです。当時演出助手に応募したかったのですが諸事情で叶わず、コロナ禍で募集が無くなり「ご縁が無かったか…」と思っていたら突如募集が出たので「ご縁だ!」と思い連絡しました。

     作品について教えてください  
→一見すると現代会話劇っぽいイメージを受けますが、その世界の中でのみ成り立つ要素を十二分に孕んだファンタジー作品だと思っています。ちゃんと観終わってから、ドラマチックだったなあ、と思う気がします。

    出演者の七井悠さん、関彩葉さんについて教えて下さい    
→関さんはドラマのお話を楽しそうにされます。七井さんはグルメな方です。

    稽古のエピソードを教えてください   
→「探偵」とか「カワウソ」とか、稽古場でだけ分かる言語が増えていって、ついには「カワウソ力が高い」などの造語が生み出されるのが面白いです。

    この作品のおすすめポイントはどこですか?   
→文字で観ると難しく思えるところもありますが、舞台で観ると肩ひじ張らずに見られる作品だなと思います。やわらかい空間が出来ているので、ぜひ劇場でご覧いただきたいです。(そう感じられるように、各々のセクションの方が力を尽くしている作品だと思います。)


山木晴香(演出助手)


    自己紹介をお願いします 
→劇団六風館という、大阪大学公認サークルに所属しています! 文学部の2回生です。既成脚本を中心に、年5回ほど公演を行っています。

   この公演に参加した経緯を教えてください  
→久野さんの脚本のファンで、その世界観がどのように作られるのか興味があり、また少しでも力になれることがあればしたいと思ったからです。

     作品について教えてください  
→舞台を見ているんですが、その舞台に自分がより深く入り込んでいるような、そんな気分にさせられるお話です。出口の見あたらない迷路を舞台上の彼らとともにさまよいながら、かすかな光を手にできるようなできないような、、、そんな風にわたしは感じました。


    出演者の七井悠さん、関彩葉さんについて教えて下さい    
→お二人とも、テイクごとに、新しい試みをされていて、稽古中なのに、毎回違う作品を見ている気分になれました。七井さんは落ち着かれていて、関さんはかわいらしい方ですが、お二人ともパワーが強く、いつも圧倒されます。


    稽古のエピソードを教えてください 
→七井さんがおっしゃった「足の裏の話」のエピソードが印象に残っています。演技中に動くとき、体の上部に意識が行きがちだが、重力を受けているのは足の裏だけなので、そこを始めとして足を動かすと、いいものができる、自分の体を忘れてはいけない、というお話。はっとさせられました。


    この作品のおすすめポイントはどこですか?   
→この作品のおすすめポイントは、途中、とある事実が判明する部分です。当たり前ですが、そこからの流れは大きく変わります。そして、二人の登場人物のやりたかったこと、考えていたことが紐解かれていきます。観客の皆さんには、二人のさぐりあいと、明かされていく本心を追いかけるように見ていただければと思います。


缶々の階がせんがわ劇場演劇コンクールグランプリを受賞!講評など。


缶々の階が、2022年せんがわ劇場演劇コンクールにてグランプリを受賞しました。

『だから君はここにいるのか』【舞台編】 
脚本・演出:久野那美
出演:七井悠 三田村啓示

講評https://www.chofu-culture-community.org/events/archives/8686#kouhyou
インタビュー:https://www.chofu-culture-community.org/events/archives/8686#interview

受賞公演は2023年5月31日~6月4日 せんがわ劇場にて。

演出日記(中村一規)

場当たりも終わり、明日はゲネプロです。
今回の4作の演出ポイントを書いてみました。

*****


『パノラマビールの夜+』

演出ポイントは、やりとり。プランよりキャストのやりとりを優先
嚙み合わない という事が分かってきた
二人とも心と体のリアクションに少しラグがあり、それが会話を重層的にしてる
重奏かな
二人芝居だけど楽器はたくさん鳴ってます

『行き止まりの遁走曲+』

演出ポイントは、役作り。
3役ともシーン前後の情報が多い
そのままだと何も起こらない会話になるので、役者が頑張って詰めてくれてます。
噛み合ってないけど、どうやらここは3人それぞれにとっての約束の場所のようです。

『点転+』

演出ポイントは、間と衣装。
それぞれが好き勝手言ってるだけのセリフ群なので、ほんとの情報は言葉以外にたくさん込められています
出来上がってみたら、すごく本編と地続きの作り。
シチュエーションコメディだと思うんやけどなあ…

『話すのなら~客席編+』

演出ポイントは、ミザンス。
どこに座るか、どっちを向くか、どのタイミングで立つか、誰にしゃべるのか。
とにかくそれだけを決める稽古でした。
この台本が本編からすると一番スピンオフ感がつよいです。
すごくきれいな蛇足です

*****

『上映会ー立ち会えなかった人のためのー』
12月23日(木)~26日(日)
@難波サザンシアター

http://floor.d.dooo.jp/isu/

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椅子の階稽古日記『とある日の稽古』:桜田

公演まであと数日。ドキドキワクワクしています。
毎稽古、ダンジョンを攻略しているかのような気持ちで臨んでいます。

先日の稽古は、相手の役と自分の役を交換してやる、ということをしました。
自分の役を外から見る機会が思ってたほどないんだなぁという発見と、相手が自分の役をやってくれることによってその人物の、私が想像できなかった別側面を見ることが出来たり、自分が相手の役をやることによって、この人物を内側から見る…覗く?ことができたり。
とにかく新発見の連続でした。面白い。

稽古中(外も)はずっと『立場』や『視点』について考えながら試行錯誤しているのですが、何かひとつの視点からその視点の外に存在するものを見る時と言うのは、鏡の内側から外を見ている気持ちというか感じというか、そんなことを思ったりしました。

椅子の階公演は12/23-26 難波サザンシアター
詳細とチケットはこちらです:http://floor.d.dooo.jp/isu/

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椅子の階稽古日記「エビフライ」 田宮ヨシノリ

田宮ヨシノリです。

俳優でまわしていくみたいなので、稽古について少し書こうと思います。

今回の稽古は少し特殊で、2〜3日連続で集中稽古をした後、しばらく空いてまた稽古をするといったような感じで。
そうすると、一回稽古してから課題が生まれてそれを次の稽古までに解決する。というサイクルがいつもより大きな輪になる。
そうなると、いつもより課題という壁を丁寧に登っている感覚があります。
これまで、経験してきたことを思い出したり、先人の登り方を見たり聞いたり、違う登り方をしたり。。。
もっというとこれまでは、自分の得意な登り方で登ってきたり、他の人に引っ張り上げてもらったりして、雑に登っていたような箇所も粗となって見えてきているような。
階

そんな中で直近の課題はエビフライです。
エビフライと名付けたのは久野さんです。自分はすごいしっくりきてます。
具体的にどういう課題なのかっていうのは置いといて。。。
到達点がめちゃくちゃ美味しいエビフライになるか、刺身になるのか、エビチリになるのかはわかりませんが。
今日の稽古でどうにかできればと思っています。
本番近づいてきていますが、焦らずやります。

2021 くちばしの階 音声配信公演のご案内


2021年、めずらしく春先に公演を終え(点々の階『点転』)た階は、くちばしの階として、もうひとつの小さな企画
<音声配信公演>を始めました。
まずは3か月間にわたり、小さな、音だけの物語を劇場ではなくお客様のお手元に届けます。

詳細はこちらから↓
http://floor.d.dooo.jp/kikimimi/

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新幹線の車窓から(新免)


埼玉は進修館を目指し、新幹線に乗っています。
例の唾液の検査、提出してから結果が出るまでが最近で1番のじりじりした時間でした。やーね。

今回の場所は点転シリーズで1番広くて1番窓が遠いので、窓女としてのアイデンティティが確立しにくかったのですが(私の中で)、別に彼女は窓が見たいのではなく、窓の先にあるものを見たいだけなのだと思うとしっくりきて安心しました(私だけ)。
本当にちゃんとは見えてなくても、彼女にはわかる光景があるのだと。

こうやって新幹線の窓から見える光景だって、人によって想いを馳せる対象は全然違うんだろうな。
私は今田んぼを見て岡山に帰りたくなっています。今年こそは帰れるのかしら。

久野さんの描く戯曲は、おんなじ場所にはいるけど、たまたま出会っただけでみんなで協力して一つのものを作り上げたりはしないし今後外で見かけても声はかけないのだろうなという人たちが多い気がします。終着点ではなく、通過点、もしか特異点で出会ってしまった人たち。
でも、たぶん、ふとした瞬間に思い出してしまう会話をかわしてしまった人たち。

今回もそうなんじゃないかなと思っています。
あなたにとってどうか、ふとした瞬間に思い出せる物語になりますように。

稽古日記 「ニューなんちゃらの日々」大西智子


ニューなんちゃらの日々。
ニューがつくのにいい感じではない。
私は久々の稽古で緊張ぎみ。
南埼玉公演は大阪の公演会場よりもうーんと広い。

で、空間の話、広いから全面動き回るとアスリートなみの運動量になりそう。
私はあまり動かない役なのだけど、ちょっと歩いてみたが良くなかったよう。

広いからって無駄に動かない!反省。
劇場けいこで客席から観たときに誰もいない空間込みで美しい場所だなと感じた。余白を恐れない。

白くて広い空間に5人がパラパラと立ってたり寝てたり。観客の皆さんは神々の気持ちで見下ろすのだろうか。
点転棋士役の佐々木くんは元々動きが多い役なので、今回は新たな点転技が見られるのだろうか楽しみだ。

架空の競技のフォームについて考えるのは雲を掴む話、見てるのは面白いけど大変だろうな。

ニューなんちゃらの日々はどんよりとしていますが、雲間に明かりさす、演劇になると嬉しいです


点転_埼玉_0419_ページ_1

点転_埼玉_0419_ページ_2

『点転』南埼玉公演の紹介記事がspiceに掲載されました。


初めての首都圏公演。会場は[東武動物公園]のすぐ近くにあり、建築のユニークさでも知られている、埼玉のコミュニティスペース[コミュニティセンター進修館]!

http://spice.eplus.jp/articles/286364

初演映像コメンタリー~囲碁棋士田村千明三段を交えて~ 映像コメント全文

先日、大阪公演のレビューを頂きました田村千明三段を交えて、初演である  【点の階  「・・・」】 のコメンタリー収録したものをYoutubeで公開しております。


こちらの記事では、上記動画のコメントを文字に起こして掲載しました。


動画内および本文で出てくる【点の階  「・・・」】初演は以下より、
Amazon prime×観劇三昧にて配信中
※現在配信停止中

また、大阪公演については以下より、
階mart-点々の階「点転」大阪公演-@space korallion

それぞれ映像作品をお求めいただけます。
※大阪公演映像配信は5月末までの予定ですので、お見逃しなくご視聴ください。一度購入されると配信期間中何度でも視聴が可能です。



以下、コメント内容全文。
下記のように発言者を表記(敬称略)

点々の階:制作  若旦那家康・・・若
点々の階:脚本・演出  久野那美・・・久
点々の階:出演俳優  三田村啓示・・・三
後援団体関西棋院様より  田村千明三段・・・田

○○○○○●●●●●○○○○○●●●●●○○○○○●●●●●

若:どうもこんにちは。点々の階制作の若旦那家康です。
今回は前に「点の階」でやった「・・・」という作品を見ながらビデオコメンタリーを収録しようと思っています。まず、「階」の主催でこの作品を作りました作・演出の久野那美さんです。よろしくお願いします。

久:よろしくお願いします。

若:そして前回はダブルキャストで出演してまして、今回点々の階ではずっと出ております。俳優の三田村啓示さんです。

三:よろしくお願いします。

若:そして、囲碁演劇、囲碁とコラボレーションした演劇ということになっていたので、
演劇の話ばかりをしていても仕方がないので、スペシャルゲストをお呼びしました。囲碁棋士の田村千明先生です。よろしくお願いします。

田:よろしくお願いします。

若:いやあ囲碁と演劇っていうのがすごい混ざっている…。囲碁を題材にした演劇とかは考えれなくはないんですけど、なんで久野さんがまず囲碁と演劇を混ぜようと思ったのかっていうのを聞きたかったんですけど。
ここで今登場した…。(舞台右の入口より)雪、すごい雪だったんですよね。この時に出てるこの子は京都の女優さんなんですけど、日替わりでこれ千明先生出てたんですよね。

田:そうなんですよ。久野さんに誘っていただいて一回だけ出させていただきました。

若:舞台に出た、まあちょっとした女優経験みたいなことってあったりとかするんですか?

田:いやいやもう。無いです全く。

若:初舞台が。(笑)

田:初でした。(笑)

若:あの状態。(笑)

田:はい。

若:すごい…。度胸がすごいですね。

田:いやいやいや。私の他に棋士二人、三人で(一緒に)出させていただいたんですよ。

若:さっきの(ように)。

田:はい。

若:さっきは女の子一人だけで来ましたけど、そこは三人で。

田:はい。

若:この人は棋士?(映像右の入口よりまた人物が登場)これは…違いますね。今回も出てます、七井さん。

久:はい。七井さん。

若:という俳優さんで、だから本編が始まってるんですけど。
まず久野さんが「出てみたらどうですか?」って言ったということ自体がすごいなって。

久:何でですか?(笑)

若:いやいやいや。(笑)どういうノリでそれをお願いしたんですか?

久:初めてお会いした日に、女子会みたいに女性4人で、たぶんお茶しながらお話したんですけど。その時に演劇とコラボするっていうのはすごい乗ってくださって皆さん。

若:うんうんうん。

久:なんですけど。最初に言われたのが、お友達とか他の棋士の先生に「演劇とコラボするんだよー」って言ったら、「え?出るの?!」って言われるというのを千明先生がおっしゃってて。

田:(笑)

久:はっ!そうか演劇と絡むって言ったら「出るの?」って…そりゃ言うよなあって。

若:うんうん。

久:そっかぁ…。「出ますか?」って聞いたんです。(笑)

若:はい。

久:そしたら「いいんですか?!」って言われたんです。(笑)

一同:(笑)

久:「ぜひ。」って言ったら、次の日に千明先生からご連絡があって、
「あのー、理事の先生が一緒に出たいと言ってくださってるのですけどいいですか?」って言われて、「ああもうぜひ!」って。(笑)

田:(笑)

若:すごい。とんとん拍子で。

久:はい。ありがたいことですね。

三:ありがとうございます。

若:その時、囲碁と演劇をコラボレーションさせるという話になって、実際にお会いして盛り上がるということになったのですか?

久:はい。

若:まず久野さんに、なぜ囲碁とコラボをした演劇を創ろうと思ったのか。聞いて良いですか?

久:はい。これは何回もアフタートークの時にも…初演の時にもさせていただいたんですけど、一番最初はツイッターなんですよ。

若:うんうんうん。

久:私が演劇をちょっとやめてた時期にツイッターを始めて。演劇じゃなくて園芸をやってたんですね、その頃。

若:園芸…植物を育てる?

久:植物を。そう。で、私ゴーヤだけがうまく育たなくて。「ゴーヤが育たない」ということをツイッターに書いたんですよ。
そしたらある人が、全然知らない人が、「ゴーヤと言うのはね」ってゴーヤの育て方をすごい詳しく教えてくれるんですよ。
で、「何だこの人」って思ってしばらくやりとりをしてたんですけど、その頃からプロフィールに「囲碁好きです」とか「アマチュア何段です」っていう方がすごい増えてきて。
「なぜだ」と思ってたら、そのゴーヤの人が千葉にある囲碁教室の先生だというのが分かって。
で、囲碁教室とダジャレで有名な方なんですね。

一同:(笑)

久:囲碁系のダジャレを作って、それでマグカップとかを作るような人なんですけど。

若:え。囲碁系でダジャレって、そこに食いついてしまうんですけど。どんなんがあるん…。

久:今、持ってきましょうかコップ、マグカップ。(離れる)

若:千明先生は、その方は知っている?

田:いや、私の周りで…ちょっと囲碁のダジャレは…いないですね。(笑)

若:なんか、あのー、すごい…難しそうっていうか…。

久:すいません。(戻ってくる)

田:そうですよね。

若:おじさん感すごいですよね。

田:すごい気になりますよね。

久:読んだらいいですか?ダジャレ。

若:じゃあ、ぜひ。それがどれぐらいうまくできているのかをちょっと先生に来てみて。

久:たぶん、私たちには…そうなんですよ。私たちにはわからないんですよ。囲碁がわからないと。「苦しい時のコミ頼み」「両手にハマ」えーっと「キリなんじゃろ」

若:ちょっと、あのー…。(笑)解説してもらっていいですか千明先生?

田:ひそかにじわじわウケる感じですねこれ。(笑)

三:あっ。じわじわ系の。(笑)

若:囲碁用語、なんでしょうね。あの…なんだ、ことわざに囲碁専門用語みたいなのが。

田:そうそうそう!そういう感じ。囲碁用語が入っているって感じですかね。

久:「一間トビで握手なう」

若:んん?

田:あのね。「一間トビに悪手なし」っていう、ことわざというか格言があるんですよ。たぶんそれをもじったのかなと思います。

若:なるほど。

久:囲碁わからないと何もわからないですよねこれ。

田:そうですよね。

久:何なんだろうと思ってたんですよずっと。

若:けど作品を創ると…あ、三田村君出てきてますね。

三:出てきました。はい、僕です。はい、出てきました。

若:三田村君もこの作品をやるにあたって、囲碁を?

三:そうですね。

若:習った?

三:そうです。千明先生のいる関西棋院さんに、何人かでですね、おじゃましまして。囲碁体験みたいなのをする。みたいな感じで、行ったわけですよ。ただ、全然囲碁を知らなくて本当に。まあ将棋とかオセロとかって、小中学生の頃とかクラスで。

若:やるね。

三:はい。休憩時間とかにやりましたけど。流石に囲碁は…。知ってますし、囲碁教室とかは近所とかにありましたけど、実際やったことはなくって。

若:五目並べとかはね。

三:そうですね。

若:小っちゃい頃とかにも触れてることはあったけど。

三:そうなんですよ。

若:絶対将棋よりも囲碁の方が…。この駒が無いから将棋できへんとかはあるけど、白と黒の石さえ沢山持ってたらできるのに。将棋は触れるけど、囲碁なかなか…確かに触れないですね。

三:そうなんですよね。そんな感じで、だからこの年になって初めてやるわって。いやあ、その節はありがとうございました。

田:いえいえいえ。来ていただいて。

若:ここでお礼を言う(笑)

田:ありがとうございます。こちらこそ。

久:若旦那さん、私さっき話途中でコップ取りに行っちゃったよね。

若:はいはいはい。そうでしたよね。

久:すいません。

若:いえいえいえ。(笑)

久:で、そうなんです。この人が囲碁の先生で、囲碁の人たちがわらわらフォロワーさんに入ってくださって。
で、すごい特にアマチュアの囲碁の方ってすごい好奇心の旺盛な方が多くて。「演劇って何すんの?どんなのなの?」すごい聞きはるんですよ色々。

若:おお。

久:でみんなが、みんなが言うんですよ。「囲碁の劇がない」「囲碁の映画とか漫画とかがあんまりない」「将棋は色々あるけど囲碁はない」で、「劇をやっているなら囲碁の劇を作ってください」って言われたんです。

若:さっき言った、将棋より簡単にできそうなのになぜか。

久:何でなんでしょうね?

若:三田村君も触れてこなかったっていうのは…確かに。囲碁を題材にした…ヒカルの碁って漫画はあったんですけど、あれはじゃあ囲碁界の中で、田村先生たちとか関西棋院の囲碁部の人たちは「きたー!!碁の漫画だー!!」みたいになったんですか?

田:すごかったですよ。あの時のブームが。もう毎週子供教室に何十人も。

若:へえー。

田:ヒカルになりたくてみんな。

久:ああそうか。

田:そう。(笑)すごかったですね。

若:わかりやすいですね。なるほど。全然関係ないですけど、僕もキャプテン翼が始まったからサッカー教室行きました、小学生の時。

一同:(笑)

三:そうやったんですか。(笑)

若:でその後、まあコラボレーションして、三田村君も久野さんも。久野さんもその時に囲碁を習ったってこと?あまり知らなかったてこと?

久:はい、その時教えてもらって。で、すごい感動したんですよ。初めて囲碁を教えてもらった時。

若:ほお。

久:私の劇の創り方が…わりと固有名詞が使えなくて私。

若:うんうんうん。

久:うん、今までたぶん一個も無いと思うんですけど。固有名詞が使えなくて。何かその…主役がないって言われるんですけど。

若:だからキャラクターに名前をつけてないってことですね。

久:うん、そうです。で、囲碁を教えてもらった時に「わあ!一緒だ!」って思ったんです。

若:おお。

久:石に名前がついてない。で、どの石でもいいんですよ。最初に置かれるのは。

若:うん。うんうんうん。

久:で、その石が、ほかの石との関係性の中で、物語の中で、自分の役割というかアイデンティティが作られていくじゃないですか。囲碁って。

若:置かれた時に、そのポジションが決まるっていうこと?ああ…そうか。

久:その石自体は何も変わらないのに周りの環境が変わる事で石自体の価値が変わっていくっていう…すごい。すごい!と思って。

若:ああ。なるほど。

三:確かに将棋って王将とか歩とか桂馬って、やっぱり名前がありますよね。

若:何かを…その、誰かを…キングを取るチェスとかもそうですよね。キングを取ったらいいとかっていうルールではないってことですよね、囲碁自体は。だから…一個一個が進んでいった時に、その関係性が分かる。
これは…確かに「ミザンス」って…演劇では、立ち位置でどう見えるかっていうの…。(映像を見て)このミザンスはこう…七井さんの後ろに三田村君がおって、お客さんにとっては三田村君が見えなかったりする…位置が。
今、七井さんが主役の石になってる、みたいなことなんですかね?

久:いや、たぶんそうじゃない気がする。わかんないけど。(笑)

若:そうじゃない?

久:なんかね。はしっこにあってもえらい石っているんですよね?たぶん。

田:そう。そうですそうです。

久:ね。だから、真正面から見て前にいるから強いとかでは、どうもないみたいなんですよ。そこがかっこいいですよ囲碁は。

田:(笑)

若:なんか…「あそこに置いた石は何なんだろう」って思ってたら、後から効いてくるみたいなこととかって、ことですか?

久:うん。うん。

田:ああ、そうですね。
たぶん久野さん言ってるのは、置く側が…囲碁って陣地取ったら勝ちなんですけど、「陣地を取りに行きなさい」って言って置いた石とか、「戦いに行きなさい」って言って置いた石とか、そういうのが戦いを終えた後は「じゃあもうあなたもういらなくなったから、さようなら」みたいな…。
結構進んでいくうちに役割が変わってくるというか、環境が変わってきて、変化していくんですよ。

若:なんか役目が…あ。それはだから…演劇で言うと役目が…出ハケみたいなこと…っていうことなんだね。
だから三田村君はさっき何かのために出てきたけど、(映像を見て)今は役割がないくらい、七井さんと藤谷さんのやりとりになってるっていう状態なのかな。

久:ああそっか。そうなのかな。

若:これは白黒の衣装っていうか喪服だったと思うんですけど。

久:はい。

若:それもやっぱり囲碁を意識して?久野さん。

久:そうですね。私本当だったら…上手になれたら囲碁そのものの、ヒカルの碁じゃない新しい「なんとかの碁」とかできたら良かったんですけど。なかなか、囲碁そのものがあんまり上達しなくて。すごい好きなんですけど。
なので囲碁そのものに手を出すのは恐れ多いなあと思って。私の手に負える架空の競技を…。

若:創った?

久:うん。私が思ってる、囲碁に似てる競技を、創った。(笑)

若:(笑)

田:でもこの「点転」って競技をやっているっていう設定じゃないですか?この点転っていう競技を私も観させて頂いた時に、すごい囲碁に近いというか。

久:本当ですか。嬉しい!

三:ええっ!(笑)

久:やったー!

田:久野さんが感じてる感じ方…囲碁に対する感じ方がすごい独特の目線と言うか。
ただゲームとしてじゃなくて囲碁の本質みたいなものを表現してるなあと思って。だから見れば見るほど囲碁の深さとシンクロしてくるんですよ。

三:へえー。

若:すごい嬉しそうなコメントが。(映像を見て)あ。新しい石が出てきましたね。

一同:(笑)

若:この佐々木君が実は…すごく囲碁が上手いって。

久:一番上手くなりました。いや、上手いって世間一般ではそんなに上手くないとは思うんですけど、私たちの中では一番上手い。

若:今ひょっとしたら演劇界で一番囲碁の上手い俳優かもしれない。

一同:(笑)

若:今もちょうど点々の階になって、再演なので創りなおしている所だと思うんですけど、基本的な役割は変わらない状態でやってるってことなんですよね?

久:はい、そうです。

三:はい。

若:まだ稽古、その演劇の稽古以外に囲碁をみんなでやったりもしてるんですか?

久:いや、今のところはまだコロナとかでバタバタしてて、中々…。

若:そうね…会えない、中々…。

久:そうなんです。でもみなさん、これ(初演)やった時にみんな教えて頂いて、楽屋でね、「本番前にやるのにすごい良い」って言ってましたよ俳優さんが。落ち着くし集中できるからって。

若:へえーなるほど。

田:すごい集中しますもんね、やってたら。

三:楽屋が和室だったので。

若:あ!

久:そうですね。

若:なるほど。

三:何か環境的に…。(笑)

久:そうでしたねあの時は。

若:会場、京都芸術センターの講堂なんですけど、裏が大きい大広間みたいな楽屋なんですよね畳敷きの。なるほどじゃあみんな碁盤とか碁石を持ち込んで。楽屋に。

久:いや関西棋院さんがこの時すごい…もう皆さん、お客様にプレゼントしてくださったんです。小さい囲碁セットを。

若:えええ!すごい。

久:素敵でしょ。で、それを私たちも頂いて楽屋でやってたっていう。

若:なるほど。それ今は誰かが…久野さんが持ってるんですか?

久:私も持ってるし、たぶんみんな。(当時の)何人か持ってると思います。

若:じゃああれですね。大阪公演の後に埼玉公演があるんですけど、もう埼玉行ったらみんな家に帰らないから…。

三:(笑)

久:うん。やりましょう!やりましょう!

若:宿で囲碁大会ですよね。

田:ぜひやってください。(笑)

若:僕もいっぺん習いに行かないといけないな。

久:あ、「ごやねん」いきましょうよ。

若:そうですよね、このコロナの時期だから…Youtubeとかでやられてるんですよね、先生。

田:そうですね。今ちょっと集まって中々できないんで…あのYoutubeでルールを説明したりとか、そういうのを出しているんで。
それを見てなんとなく囲碁のルールを覚えてもらったら、後はもう対戦できますんで。

若:あ、すぐに?いやあ…一緒にツアーに行くまでに、勝手に練習して三田村君とかを負かしてやりたい。

三:いや僕弱いんで。

一同:(笑)

若:(映像を見て)あ!ここが!あのちょうど…新しい「点転」っていう久野さんが創った囲碁のようなゲーム。(のシーン)めちゃめちゃダイナミック。(笑)囲碁に比べるとダイナミックですよね。

田:いやでもこの手つきが囲碁と同じなんです。

若:ああー。

久:教えて頂いた通りやってるらしいです。

田:そうです。(笑)

若:石の置き方の…

田:そうです!

若:持ち方みたいなのがあるってことですか?

田:ありますあります!

若:へえー。

田:人差し指と中指で挟むんですけど。本当に、正に今やっていたような形で。

若:これ音もすごかったですよね。すごいダイナミックな音が鳴るというか。

田:(笑)

若:眼鏡と眼鏡が喋っている。

三:(笑)

若:稽古っていうか創っている最中にちょくちょく久野さんは(囲碁のことを)聞いてた感じなんですか?
ある程度勉強して、一気に(台本を)創って…実際千明先生とか出てもらう時に、本番になって観てもらった感じなんですか?

久:えーとですね…その前に、千明先生からすごい素敵なお申し出を頂いて。本番前に、「お互いの競技について深く知る機会を設けましょう」と。

若:おお。

久:で、私たちは囲碁を教えて頂いて。その場で「点転」について説明させて頂きました。

田:(笑)

若:なるほど。僕は情報も知らずにお客さんとして行ってたんで。見て、いきなりダイナミックなことをしてるなーと思って。
なんかドキドキしませんでした?そういうの説明する時に。怒られやしないだろうかって。

久:うん。最初は「え。これ囲碁劇とかなめたこと言うなよ。」とか思われたらどうしようと思っていた。すっごい最初は…そうなんですよ!いやすごいだって…ねえ?大事に。当たり前ですけど。大事にしていらっしゃる世界じゃないですか。
それを何か素人が…。いや、でも私は私なりにすごく大事にしているけれども、なんか全然違ってたら…。(囲碁と「点転」は)違うのは違うんだけども。なんか違ってたらどうしようと思って…。

田:(笑)

久:(そうしてる)間に、たまたま神戸新聞の溝田さんという記者さんが、当時演劇と囲碁の担当をされてて。ちょっとご紹介頂いて、「どうでしょう?これは囲碁劇と言ってもいいでしょうか?」っていう感じで…お話をしました。最初に。

若:ああ…!すごい、その…囲碁と演劇を担当している記者の人がいるのが…、文化(担当)としてはまあ近いだろうか?新聞社の中で文化担当がそんなにいれない(在籍できない)のもあるような気はするんですけど。すごい…いい人がいましたね。(笑)

久:そうなんです。それで私たまたま前の年の正月の…えーっと私が神戸なので出身が。神戸新聞の巻頭特集みたいなやつにインタビュー載せて頂いたんですよ。

若:うんうんうん。

久:その時にお話してて、「次は何ですか?」「つ、次は…囲碁劇を…。」みたいなことを言ったら、「え!僕囲碁も担当してるんですよ!」って言われたんですよ。(笑)

若&田:(笑)

若:すごい!ラッキー。なんかそういうツキありますね久野さん。

久:はい。私ツキだけはあります。

一同:(笑)

若:なんでしょうね?どうやってそういう繋がりを持っていくのかが分からないですし。
僕も全然知らなかったですけど、
この時はお客さんで、今回は再演するにあたって制作をしたから、千明先生と「初めまして」ってお話しできたりするんで。繋いでいくっていいですね。

久:囲碁を教えて頂いた時、繋いでいくって言葉よく使ってられましたよ、先生方が。「繋いでください」って。

田:そうですそうです。(笑)

久:切れないように。(笑)

若:五目並べて繋がったら、終わりじゃないんだと。

田:そうです。(笑)

若:ぐんぐんぐんぐん、繋いでいかないといけない。

久:だからやっぱ似てるんですよ。囲碁と演劇は…違うか。(笑)

若:おお。

田:いやでもすごい似ているというかやっぱり、ひとつのものを突き詰めていくというか追求して完成度を高めていくという意味では似ているかもしれないですよね。

三:うん。うん。うん。そうですね。いや…(笑)

若:すごい熱い。熱く語ってる佐々木君。

久:囲碁と点転に一つだけ決定的な違いがあって、点転は盤の大きさに決まりがないんです。

若:あっ!伝えてましたねそのこと。(劇中で)

久:(笑)

若:どこまでもいける。

久:どこまでもいける。だから「モンゴルの草原のような」とか言ってるんですけど劇中でも。強くなると海をまたいで戦うんです。名人クラスは。

若:すごい。ドラゴンボールみたいな世界。

久&三:(笑)

若:何か…聞こうと思ってたのに出て行ってしまったけど…。これを再演しようと思った理由ってあるんですか?たぶん他にも色んな作品、久野さんも年に一本は新しいものを書いてたりとか、色んな「階」をやってきたんですけど。
今回東京…じゃないな、埼玉。関西と関東でツアーをするっていうこととか含めて、作品を「点転」をもういっぺんやるって思った理由って何ですか?

久:一つは…この日すごい雪で…。お客さんがね…。

若:(映像を見て)ねえ。今。

久:そうなんですよ。来たいのに来れなかったっていうお客さんがけっこういらっしゃって。

若:ああー。

久:途中で車が通れないから諦めて帰った。とか。

若:はー。

久:という方もいらっしゃって。すごいお客さん少なく…結構賞を頂いたりとかしたんですけど、お客さんがすごい少なかったので、もう一回できたらいいなあと思ってたのと。
それから、あとツアーをしてみようと思った時に、今までの作品でもう一回これをツアーでやりたいと思ってくれた人が一番多かったんです。このチームが。

若:ああそうか。その都度俳優は変わるけども、このメンバーがみんな行きたいと思った?

久:特に佐々木君が。

若:佐々木君、熱いもんね。この「点転」に対する熱意がこのシーンから。(笑)

久:(笑)

若:てかもうずーっと、1時間の作品の間40分くらい、

久:半分くらい佐々木君のセリフですからね。

若:そうですよね。すごいですもんね。

久:で、今新しい、ニュー「点転」はね、身体表現をしようと試みているので。

田:へえー。

久:ダンスとかを教えてもらったりしてたので。この4年間で。

若:ふーん。

久:そういうダンスとかの表現を活かそうとしています今は。

若:あ、じゃあ、あの海に飛ばす、

三&田:(笑)

若:海の向こうまで飛ばすポーズとかも…ポーズというか、動きが変わってきてる?

久:フォームですね。

若:フォーム。フォーム!

久:フォーム。

田:へえー。楽しみ。

久:(笑)

三:しなやかになってます。

久:ね、しなやかになってますよね。

三:(笑)

若:違いが分かるくらい?

三:どうかな…。何かしなやかに…。(笑)

久:だいぶ違います。だいぶ違います。

若:じゃあちょっと…この映像もね。僕たちの話も聞いてほしいですけど、この映像もしっかり何回でも見て、見といてもらって実際に観に来てもらえたら…「え?!同じ人?」みたいな感じになるんでしょうかね。

三&田:(笑)

久:そう…あの本番…えーっと再演見てからこっち見たらカクカクしてる感じがすると思います。

田:へえー…すごい。


----------------27:47---------------- Part3ここまで


久:ね、三田村さん。

三:うん…そうですねえ、みんな若いですね、まずね。

久:若いですねー。

一同:(笑)

若:これ何年前でしたっけ?

久:4年ぐらいじゃないですかね。

若:4年?!もうそんな経つんだ。確かに…。

三:びっくりしますね。

久:びっくりする。若い。みんな。

若:けど、そこから4年経って若さから、その…ベテランに、若手からベテランに俳優がなっていくのに、体がしなやかになっていくのって素晴らしいことじゃないですか。

久:そうですね…!それはそうですね。

若:人は進化するんですね。

三:そうですね、成熟ですよ。成熟していく。

田:(笑)

若:囲碁界とかは…ベストな年齢とかってあるんでしょうか?

田:あー…でも、ありますね。やっぱり20代…10代20代が今…ピークですね。

久:そうなんですか?!

若:横の世界ですけど、将棋とかだったら藤井…さんとか。

田:そうですね。だからあれぐらいが一番…まだ、藤井壮太さんはまだまだ今から伸びるっていうタイプだと…。

若:あー。

田:だから、ちょうどあれぐらいの時期がすごい、一番いい時期なんじゃないかなと思います。

若:ちなみに千明先生はいくつから囲碁を?

田:私は10歳ぐらいから始めたんで、

三:おお。

田:遅かったんですよ。

三:え、それでも。

若:遅いんですか?

田:みんなもう3歳とか4歳からやってるので。

三:ええ?!

若:それはやっぱ家の人が囲碁をする環境に?

田:そうですね。だいたい殆どはもう親がやるとか。おじいちゃんが好きとか、そういう感じで始めてると思います。

若:確かに囲碁を触ったのはおじいちゃんから…。

三:え、3歳ぐらいでわかるんですか?

田:3歳でもね、できるんですよ。

若:へえー。

三:ええ!ええー!(笑)

田:最初に入るところはすごく3歳でもわかるくらい簡単というか、ルール自体が少ないんですよ。これも「点転」と似てて。競技が。

若:なるほど。

田:ルール自体は少ないんですけど、やればやるほど深くなっていくんで。

若:3歳からできて道具もこうなんだから、僕らの力でもっとこう普及させていきたい。

三:(笑)

久:うん。させましょう。

田:そうなんです。だからこういうコラボさせて頂いてすごいありがたいというか、中々こう囲碁に触れる機会がないんで。囲碁っていう言葉を聞く機会も中々ないじゃないですか。普通にしてたら。

若:あー。そうか。そうな気もしますね。

田:ね。だからこういう「囲碁」っていう言葉を使って頂くだけでもすごい印象に残りやすいというか。
だから私たち(囲碁棋士、棋院)にしたらすごくありがたい企画やなあって思って。

若:もっと囲碁劇だっていうことをツイートしときましょう。点々の階はね。

田:(笑)

久:でも囲碁好きな方はこれ見て「え!囲碁ちゃう!」とか思ったりしないかな。

田:あ、全然。

久:大丈夫かな。

田:たぶんね、好きな人は面白いと思います。なんとなくこう世界観がわかってくるというか。

若:やっぱ、囲碁をやってるということとかも含めて…素敵な人は知的好奇心みたいなこととかで。
自分の世界…まあ伝統を守っている頑固おやじみたいな人でなければ、「ああそういう捉え方もあるんだな」みたいなことで、

田:うんうんうん。

若:なんか盛り上がれそうな気がしますね。

田:そうですね。やっぱ私も見て新鮮な感じでした。

久:(笑)

田:点転の競技というか…そういうのを見て。でも最初一回見ただけだと…なんとなくわかるんですけど、2回目3回目見た方がすごい(内容が)入ってくるというか。

若:ああー。いいことおっしゃる。(笑)

田:見れば見るほど、じわじわ来るんですよ。

若:うん。その…僕たち…僕たちというか、三田村君とかはたぶん大学生から演劇をやり始めた?

三:ああ、そうですね。

若:まあね。3歳から演劇やってたらもう、もっと深い演劇と、

一同:(笑)

若:囲碁ができた…。ちょうどだから!成熟してきてる頃なんじゃない今?

三:今…。

若:その3歳の子らが10代20代がピークになる囲碁からすると。

三:そうですね。もう脂がのってる。

若:18…そうそう18くらいから、(笑)

久&田:(笑)

若:演劇を始めて。

三:脂がね。(笑)

田:でも役者さんってやればやるほど経験とかそういうので段々よくなってくるイメージがあるんですけど、そういうわけじゃないんですか?

三:そうですね…。いや…そうです、ちょっと難しい問いですねこれは。

田:(笑)

若:人によって体にガタが来たり…。

三:そうなんです。

若:お酒を飲みすぎたりしてくるっていうね。

田:あー…そういうこともあるんですね。じゃあ囲碁と一緒ですねそこは。

一同:(笑)

若:まとめて「人というものは」みたいなことになってしまいましたけども。

田&三:(笑)

若:実際はその…点転を見て打ち方変わったりするとか、そういうことはなかったですか? 大丈夫ですか?

田:(笑)

久:そんなことない。(笑)

若:こんな攻め方もあるんではないか、みたいに。

田:いやでも、自由にやろうっていう気持ちにさせてくれますよね。なんとなく点転で。

若:ああー。

久:ありがとうございます。(笑)

若:ある程度のルールっていうか必勝パターンみたいなって囲碁ってあるんですか?

田:いやそれもね、あんまりないんですよ。人によって得意なパターンっていうのはあると思うんですけど、それにいかに持ち込んでいくかみたいな勝負になってくるんですけど。

若:演劇もそうな気がすると思うんですけどね。

三:うん。

若:一定のルールがありそうですけど、そのルールは演出家が持ってるルールっていうか、演出の得意なパターンに俳優とかを持っていく感じがするから。
ルールが…ルールはルールであるけれども、ルールだけではないというかそのルールが幅広い感じはするなあ。
何か必勝パターンがね、あるんやったらそっちに行ってしまいそうなんですけど。

三:うーん…いや、勝ち負けってなんやねん。っていう感じです。

若:ああ。演劇が?

三:演劇において。

若:うんうん。

三:とか、まあ人生もそうですね。人生もね。

若:やっぱぐーっとまとめて人というものは、って話になってる。(笑)

久:大きすぎる。(笑)

三:そうですね、そういうことを思うんで…思う戯曲だなと。

若:あっ。

三:思わせる、そうですね。

久:あ、そうか。勝ち負けがこの話の中に2つ出てくるんですよ。

若:ほうほう。

久:えーっと点転棋士さんが勝った負けたっていう話と、この小説家の…才能の無い小説家の役なんですけど、七井さんが。
才能の無い小説家にとって勝ちとは何か。みたいな話が出てくる。
でも、私は、競技とか囲碁とかスポーツとかされてる方を見てて、勝ち負けがある世界ってすごいいいなあって思うんです。

田:でもこの「点転」の競技って負ける側が終わりを宣告するじゃないですか。

久:囲碁もそうだって私お聞きしました。

田:そう。囲碁もそうなんです。

久:ね。

田:囲碁も負けた方が「負けました」って言うんですよね。それで終わるんですけど、そこのとこがシンクロしてすごいいいなあと思って。

久:そう。そこも囲碁を習った時に「おお!」って思ったポイントです。

若:そこのルールがよく、囲碁を全く初心者の僕にはわからない…なんか「負けた」って思うんですか?

田:そうですね。自分で逆転できなくて、これ以上は打ち続けていてももう結果が見えたっていう時に「参りました」って言うんですよ。

若:うんうん。

田:それを自分がタイミングを決めるんですけど、負けた側が。

若:すごい。じゃあ、まあスポーツみたいな感じではない?時間切れとかみたいなことはなく。

田:あ、時間もね…一応あるんですけど、

若:うんうん。

田:時間で切れるってことはほとんどなくって、もうだいたい負け始めてたら負けそうってっていうのは分かってるんですけど、だいぶ前から。

若:ほうほう。

田:だけど、心を落ち着かせたり、自分に…自分で納得できる瞬間があって。

若&久:ふーん。

田:その時に初めて「負けました」って言うんですよ。

若:納得できる瞬間。

田:そうですね。ここまで来たら、もうこれ以上は無理だっていう瞬間があるんですよ。


----------------37:04---------------- Part4ここまで


久:なんか作品ですね。

田:そうですね。(笑)

久:作品ですね、うん。

若:普通にゲームとしての娯楽だけじゃない、何か。

田:うんうんうん、そうですね。どっちかっていうと、やっぱりスポーツとかだったらどんだけ負けてても最後まで泥臭くしがみつくのが美学じゃないですか?

若:はいはいはい。

田:でも囲碁って伝統文化で、やっぱりこの投了の美学というか…美しく負けるみたいな所も一つの芸術と言われてるんですよね。

若:ほおー。

三:ああー。

若:美しく負ける…!

久:(笑)

田:これ以上みっともなくだらだらと打ち続けているのか、綺麗に、首をはねられた瞬間に終わるっていう…。

若:ああなんかすげー!

田:そういう美学みたいなものもあるんですよね。

三:いいですね。

若:かっこいい。それは他の人の対決とかを見てても美しい…何か物語を、千明先生は感じるってことなんですよね?

田:ああ、ありますあります。囲碁ってね、同じ対局って絶対できないんですよ。

若:ほお。

田:今までね、何千年も囲碁の歴史あるんですけど、同じ対局が一回もできたことがないんです。

若:ええええ。

久&三:すごい。

田:それを打つ人によって違ってくるんですよ。打つ手が全部。自分の意思が反映されるんで。だから負ける瞬間も自分自身が決めるんですよ。

若:すごいな。

三:演劇と、それも何か…。

久:ね、似てますね。

三:そう、一回も同じ…まあ確かに何回も何回も上演しますけど、全くその動きがもう寸分たがわず一緒っていうのは全然ありえないわけだし。

若:(映像を見て)この歩数すら違ったかもね、今。

三:そうそうそう。(笑)

一同:(笑)

三:絶対違いましたからね。

久:じゃあ、この棋士さんの負け方が好きとかいう、そういう負け方ファンもいらっしゃったりするんですか?

一同:(笑)

若:「この人いさぎよい!」みたいな。(笑)

久:「この負け方が好き!」みたいな。

田:あ、でも人によっては「あ、この人はそろそろ終わるな」とか「この人はもうちょっとやる」みたいな…。

若:ねばりはるなーって。

田:ありますあります。

若:千明先生は自分でどういうタイプだと?

田:私は…すぐ頭にきてカーッとなるんで。

一同:(笑)

田:それをいったん沈めてから、「負けました」って言います。

若:ああー。

三:カッと?

田:自分に腹が立つんですよね。

三:ああ。自分に、ですか?

田:失敗したり、ミスしたってのも自分でわかるんですよ。

若:うんうん。

田:ミスしてこういうことになったってのが自分でわかるんで。それで、その自分に腹が立つから。それを心落ち着かして「負けました」って言う感じです。

若:なるほど。

三:三田村君もね、自分のミスじゃないけど共演してる俳優のミスとかあったらたぶん「はあ?!」って。

田:(笑)

三:ちょっと待ってくださいよ!そんなことないです。(笑)

久:なるんですか?

三:なりませんよ!ちょっと待ってください。(笑) 僕も…自分が噛んだりしたら引きずりますけどね。(笑)

若&田:(笑)

三:噛んだり、セリフ飛ばしたりしたら…僕はかなり、実は引きずるんですよ。

若:へえー。

久:なんかすごい飛ばしてませんでしたっけ? これ(初演)の時、三田村さん。

三:一回だけ、もう…。一回だけ何か、何ですかね、すごい寒かったじゃないですか。結構暖房が、ガンガンかけてて。それで結構僕、一回頭が本当にボーっとした回があって。

田:(笑)

若:はー…酸欠みたいになったんや。暖房で。

三:そうですね。それでちょっとなんか…おかしくなってしまった回があって。

若:これ、今流れている千秋楽ではなく?

三:(千秋楽)は、大丈夫やったと思うんです。

久:前の日じゃないですか?

三:前の日ですかね。その時にもう…もう辛かったですね。(笑)

若:(笑)

三:やりながら辛かったです。引きずってました。心が、落ち着けることができなかったです。(笑)

田:(笑)

若:久野さんはそれを見てどう思うんですか?(笑)

三:なんですか!これ!(笑)

久:いやでも、私よりも共演者の人たちが焦ってたみたいですよ。

若:ああー。
何かね、演劇やってるとベストの流れみたいな、自分たちが…あるけど、
「なんかテンポが崩れてる!」って思ったら、取り返しに行こうと思うか、いっぺん落ち着くか…。取り返しに行こうと行って総崩れになる…場合もあって。
しかもこれ出ずっぱりですもんね。

久:そうなんですよね。

若:だからいっぺん(舞台)袖に下がったりとかしたら、それこそ心落ち着けるタイミングもあるけど。出ずっぱりやもんな…。

久:あ、でもそこも似てる。囲碁の人と。私(の台本)ほとんど出ずっぱりなんですよ全員が、いつも。

若:出てきたらね、そのままいるっていう。

久:そう。七井さんなんか6年一緒にやってて、去年初めて袖にはけた。

一同:(笑)

三:すごい。そりゃすごい。

若:1時間くらいがひょっとしたら、それはもう俳優の集中力的にもベストなのかもしれないね。

久:そうですね。

若:上演時間は。

久:囲碁って何時間、何分なんですか?

田:えーっとね。大体一般的なのは、一人3時間持ち時間があるので。

久:一人3時間。

田:だから、まあ二人で6時間。

若:ふーん。

田:プラス、切れてからも「秒読み」というのがあるので、まあだいたい一人4時間とか、それぐらいは考えている時間があると思いますね。

若:へえー、その日に終わらないとかっていうこともあると?

田:あ、えーっとね。大体3時間のは終わるんですけど。

若:うん。

田:タイトル戦とかになると、一人8時間持ち時間あるんですよ。

久:すごい。(笑)

若:はあー。

田:2日間かけて一局を打つ、みたいな。

若:すごい。

三:え、じゃあ、日をまたぐってこと?

田:日をまたぎます。途中で夕方ぐらいに封じるんですよ。次の手を隠しとくんですね、打って。

若:ふむふむ。

田:で、それを立会人が保管してて。で、次の日の朝に開封するんですよ。

若:「これをやります」ってことを?

田:そうですそうです。

若:だからそのまま考えて持ち帰らないように。

久:あ!そうなんですね!へえー。どうして?どうして?

田:もう、打っちゃわないといけないんですね、自分の持ち時間内で。で、「次の手を封じます」って言うんですよ。
で、紙に書き込んで、封筒に、ちゃんと封をして。で、金庫に入れるんですよ。

若:すげえ。

久:ええ…!金庫に入れるんですね。

田:で次の日の朝それを開封して。で、昨日の最後の手はここに打ちましたっていうのを言って始めるんですよ。

若:おおー。

久:え、それは、そういうの担当の方がいらっしゃるんですか? 金庫を開ける。

田:あ、そうですね。立会人がいて。

久:立会人。

田:うん、立会人の先生がそれを担当なんですけど。すごい重要な役なので。

若:それは時間で決まってるんですか?黒と白と、どっちか。そのターンで、えっと…。

田:いや、えっとね。大体5時とか…過ぎてくると…。まあ例えば「この時間になったら封じてもいいですよ」っていうのが決まってて。

若:ふーん。

田:そうしたら、打ちたい人は打ってもいいんですよ。でも封じたい人は封じてもいい、みたいな感じで。

若:なるほど。まあそこで、だから心が乱れてたりとか、カーッとなってたら…「いっぺん封じるぞ」って。

田:ああ、そうですね。とりあえず分かりやすい所に置いといて、次の日、また気を取り直して…みたいな感じになると思います。

若:うーむ。すごい…。すごいな。2日かけて芝居とかしないもんな。

久:え、でもなんかそういう国ある…ありますよ。

若:ありますけどね。(笑)

久:(笑)

若:そういう…国?

久:うん。えーっと、タイじゃない…南の方、どこか。何日かかけてやる演劇があるって聞いた事があります。

若:ふーん。

久:あ、でもやってみてもいいですね一回、2日かけてやるやつ。

田:すごそう。(笑)

三:ふ、封じるんですか?(笑)

久:うん、封じる。(笑)

若:「次のセリフはこれです」って。(笑)

三:封じて。

久:でも連ドラとかってそうじゃないですか?

三:うん。まあ。まあ、そうですね。

久:(笑)

三:連ドラ。(笑)

若:まあ、僕ちょっとバージョンは違いますけど、2日間で10ステージやったことはありますけど。深夜2時とか朝6時とか。

久:あ!見た。私見た!

田:すごい。

若:1時間ぐらいのを2日間。なんか夜中も借りれる所とかだったんで。

田:へえー。

若:しかも、ちょうどこれ今(映像)みたいに窓があるんで、外の明かりによってちょっと雰囲気が違うかも。すりガラスでもなかったんで。
朝やるのと夜中やるのと昼やるのでは見える風景が違うっていうやつ。


----------------47:09---------------- Part5ここまで


若:(映像を見て)よく後ろを人歩くんですね、ここ。(笑)

久:うん。

三:(笑)

久:だってここ葬儀場ですからね、舞台が。

若:ああ、そうかそうか。設定がね。

久:うん、そうです。

若:いやあ葬儀場で…こんな熱い人たちが…。

三:いや初演はこんな広いスペースでしたけど、今回の再演はもう…全く違うスペースになります。

若:大阪が、ね。

田:そうなんですか?

三:はい。

田:へえー。楽しみですね、それはそれで。

三:これ何分の一ぐらいですかね? 広さ的には。

久:六分の一とか、ですか?

三:そうですね。

若:六分の一?!

久:そこまでいかないかな?

三:そんくらいとまで言ってもいいかもしれないですね。

田:えええ。

若:じゃあもう全然、入るお客さんの数も違う。

久:そうですね…しかもコロナなので。

一同:うーん…。

久:元々…でもいっぱい入れても50席くらいの所なんですけど。

若:まあ、葬儀場っていう設定は変わらず?

久:はい。

若:もう、ほぼ内容は変わらず。

久:内容変わらずで、えーっと初演の時は二本、二本立てだったんですけど、それを一本にまとめた感じになります。

若:うんうん。あ、そうか。けど登場人物はこれだけなんだな。

久:もう一人。

若:もう一人?

久:うん。この白靴下の男が三田村さんですけど、黒靴の女っていうのがいます。

若:うんうん。

久:まあでも白と黒。

若:あ、再演は。

三:けっこうこのスペースってすごいしゅっとした感じですけど。

若:うんうん。

三:たぶん再演はもう…、

久:もこっとした感じ。

三:もう、かなり…、

若:もこっ?

三:もちゃっと。(笑)

田:(笑)

三:ごちゃっと…もこっとした…。

久:「もの」がすごい多いんですよ、再演。で、今美術さんがとにかく物で埋め尽くそうとしているので。

田:へえー。

若:狭くなったのに物を増やすって。

久:はい。

三:(笑)

久:設定としては葬儀…斎場の中のちょっと不思議な、空(あ)いている部屋設定なんですけど。
ここはただ単に広くて空いているけど、再演の方は倉庫みたいな感じで使ってない部屋っていう設定なので。ちょっと狭くて、なんか…物がいっぱいあります。

田:へえー。

若:すごい。場所が狭くなったのに、しなやかに動く佐々木君。

一同:(笑)

久:あ、でも佐々木君だいぶしなやかですよ。

若:その佐々木君のしなやかさが気になってきて仕方がない。(笑)

田:(笑)

久:京都のダンスの先輩方に鍛えて頂いて。

若&田:へえー。

久:そして七井さんがいい感じに年を重ねているので、三田村さんと。

三:そうですね。やっぱ七井さんはすごく白髪が増えて。(笑)

若:(笑)

久:たった4年とは思えない貫禄のつき方です。

三:ねえ。黒い…ですね。初演はやっぱり髪が。

久:ね。

若:白の部分の…増えて。(笑)

三:白の面積が、白の面積が増えてきた。(笑)

若:陣地取り、白の陣地が増えてきた。

久:白の陣地が増えてきた。

田:(笑)

若:ほんまやなあ。なんか三田村君もすごいおぼこいなあ。

久:なんか若いですよね。みんな若手俳優って言える…こう、ルックスですよね。まだこの時は。

三:いやあ…。

若:なんか感慨深そう、三田村君が。(笑)

三:いやあ感慨深いです。いや、こんなに。あまりその…自分の出た作品を映像で見直す機会って実はそんなに無いっていうか…。あの…自分をあまり見たくないっていう…。

若:はいはいはい。

三&田:(笑)

若:分かります分かります。分かりますよ三田村さん。

久:でも佐々木君は、「自信を失ったら自分の出てる映像を見る」って言ってましたよ。

若:へえー。

久:そして「自信を取り戻す」って言ってましたよ。

三:本当?

久:最強ですよね。

三:すごい。すごいな。

田:(笑)

三:だからこういうことがある(ない)限り見ないんですよね。

田:へえー。

久:ああ、そうなんですか。

三:で、いざ見ると…「ああ。みんな…なんか若いなあ。」と思う。(笑)

一同:(笑)

若:普通の感想やん。(笑)

三:後やっぱ思い出しますね。あの時、あの時の寒さを。雪を。

若:ああー。

田:寒かったですよね。

若:いやあ大阪公演また2月やからね。またドキドキするね。

久:ああそうか。ドキドキしますね。

三:そう。

若:囲碁も見直すんですか?

田:あ、囲碁は自分の対局は絶対ですね、もう。

若:あ、それがちゃんと復習…、

田:対局を…そうそう反省するというか。まあ、どこが悪かったとか、どこが良かったとか全部、それをチェックしますね。

若:分析する?

田:分析して。

若:うん。

田:それをやる人の方がたぶん強くなるんですよ。

若:三田村君やっぱ見直せ。見た方ががええんちゃう?

久:見た方がいいですよ。

三:えっ!いや反省しますよ?

田:(笑)

三:反省します、プレイバックしますよ自分の中で。でも、映像と言う形では見ない。

久:客観的に見たほうが…、

三:(笑)

田:いやいやでもね、私もテレビとか自分が映ってるのは見たくないんですけど。

三&若:(笑)

田:囲碁やから見るっていうだけで。(笑)

若:囲碁ってその…さっき言ってた3時間、2日間で6時間とかやってる、その手は全部記録されてってるんですか?

田:いや覚えてます。

久:ええ! 全部?

若:すごい!

田:覚えてるんで…だからそれで、後で最初から最後まで全部並べ返せます。

若:うわあ、すごいぞ!

久:うわあ。

田:(笑)

若:どういう脳みそして…

田:いやいや、もうそれは訓練なんで、セリフ覚える方が難しいと思います。

若:いやいやいやいや! だって自分がミスったこととか覚えてないことありますよ。

三&田:(笑)

若:人に指摘されるっていう。

三:それは覚えてますよ。それは僕覚えてますよ。(笑)

田:(笑)

三:ちょっと待って。(笑)

若:いやいや、なんかたまにいない?セリフをポーンと飛ばしておいて本人何も気づいてない人とか。

三:それは…います。(笑)

若:いるでしょ?(笑)

三:それはいます、いると思います…はい。いやあでも自分の打った手をもう一回できるくらい全部覚えてるって…本当すごいですね。

若:すごいですね。

田:いやもうそれは訓練というか。

若:セリフ覚えるのは毎日のように稽古してるからですし、なんだったら稽古場には覚えて行かんとあかんくらいの…。

田:ああ、やっぱそうなんですね。

若:稽古にならないんで。

久:あ、でもセリフを覚えるというよりは、稽古の時にどっかのシーンを通してやって、俳優さんがみんな【覚えてる】んですよ。
「何でここでこっち向いたんですか?」って、(聞くと)「ああ、それはこの人がこう来たから、こうしたほうがいいかなと思って」って。
それを見たら、私いつもすごいって思います。

田:ああ、すごいですよね。

久:それはたぶん、千明先生が並べたのを覚えてらっしゃるのと似てるかなって思います。

田:うん。

三:まあ、そう言われてみたらそうかも。(笑)

久:あれは私すごいなって思って、いつも。

田:すごいですよね。

若:久野さんも出演してみたらどうですか?

久:嫌です嫌です。いや、いや絶対無理です。(笑) 若旦那さんは俳優なんですよ。

若:あ、僕は出演もしますし、裏方もするんですけど。

久:よく宇宙人の役とかされてる。

若:何の話ですか。(笑)

田:(笑)

若:まあけどね、宇宙人…あっ!(映像を見て)すごい! このカット!

久:これね。(笑)

三:黒い。

若:黒くなっている。

三:こうなるんや…。

若:まあすごい。このためだけに、ここにカメラありますよね。

久:そう!そうなんですよ!カメラの人が怒ってました。三田村カメラって呼ばれてましたよ、だから。

田:(笑)

三:すいません。いやいやだから…台本にですね、「盤の大きさに規定が無い」と、

若:うんうん。

三:まあさっきも話が出ましたけど。

若:うんうんうん。

三:「誰もがここが一番端だと思ってた所の外側ももっと大きな盤の内側だ」っていうセリフがありまして、

若:セリフがね。

三:まあ、実は今映像で映ってるスペースっていうのが、その会場のスペースの半分くらいの、スペースなんですね。でしかないんですよ。

田:うんうん。

三:なので、実は2倍あるんですよ。広さ的には。

若:この実際の、講堂の広さがね。京都芸術センターの。

三:そうですね。で、そのスペースのちょうど真ん中くらいに客席があって、その逆側は、つまり舞台スペースの逆側は何も使われてないゾーンなんですね。

若:客席の裏側。

三:後ろ、裏側です。

若:裏側に空いてるスペースがある。

三:はい。なので何かそのセリフとリンクさせて、使えんかなとか思ってたんですよ僕が。

若:ほおほお。

三:そこで、そのさっき僕が完全に影になってた所なんですけど、あれはもう客席を通り過ぎてるんです、実は。

田:(笑)

若:照明も当たらない。

三:そうなんです。

若:それは三田村君が考えたの?

久:当日の朝、ね。(笑)

若:ええっ。

三:なんかそこに…いやだからその…なんだろう、盤の外側に…それこそセリフが、そういうセリフがあるように、行ってみたかったんですよ。(笑)

若:言葉を…、このセリフがあるからにはそういうことを、動きをしてもいいだろう。というか体現しようとしたということ?

三:ですし、なんか単純に行きたかったんですよ。

若:(笑)

三:ああいう客席の裏に行ってみたら…行ってみたいとか…、利用させて頂いた。(笑)

若:けど、はけているわけではない?

三:はけではないっていう。

若:え、それは当日の朝って言ってたけど、この日の朝ですか?

久:2日間あったので本番が、その1日目の朝ですね。
「あの、ぼく軌道を変えてみたいんですけどいいでしょうか?」って三田村さんが、おっしゃいまして。(笑)

若:すごい。アーティスト俳優ですね。

三:いえいえいえ、もう…なんか遊びたかったんですよ。(笑)


----------------59:11---------------- Part6ここまで


若:この時ダブルキャストで、三田村君が出てないバージョン…もあるんですか?

久:はい。今、京都の「安住の地」って劇団で活躍されてる中村彩乃さんっていう女優さんが出てました。

若:それは彩乃さんは、あの(白靴下の)動きはしてないってこと?

久:してないですね。

若:ああじゃあもう、全然2バージョンで…。まあ、まず男女が違うのも。

田&三:うん。

若:ね。白靴下と黒い靴、みたいな違いもありますけど…そんな動きまで変えるのに、他の人たちは変わらない。
っていうか、それに合わせてストーリーには乗るけども、やっぱその…どこを見るかとかは、自由に変えてくれるっていう感じなんですね。

久:なんか、あんまりミザンス?を決めてなかったので、そんなに違和感なく皆さんやってた気がします。

田:ふーん。

久:なんかもう暑くなったら…。そう。ここに、ちょうど(映像の)三田村さんの後ろ側に暖房があるんですけど、これ舞台の上なんですよね、暖房が全部。

若:はいはい。

久:だから「暑くなったら適当に消してね」って言ってたんです。(笑)

若:ああ!

三:あー…。

若:その時消しに行ってたら三田村君はセリフを飛ばさなかったんや。

久:ねー!そうそう。

田:(笑)

三:ちょっと待ってください。(笑)

若:(映像を見て)あ!ついに最初の方に置いてた石が。(笑)

三:普通、芝居中に暖房消しに行くとかって…あんまりないですよ。(笑)

久:これ、ここ(劇場)にあるんですよ。しょうがないんですよ。

三:しょうがないですけどね。

若:そうね、スタッフさんが変えれないんですね。スイッチをね。(笑)

久:うん。そうなんです、そうなんです…。でも三田村さんはこんなチャレンジャーなことをしてくださったのに、
「僕は同じ味のラーメンを毎日作り続けるラーメン屋のような俳優になりたいんです」って言うんですよ。

一同:(笑)

久:意味が分からないです。

若:安定して再生できることが重要だと。再生芸術だと。

久:うん。そう言いながら、と言いながら軌道を変えるんですよ。

若&田:(笑)

三:それは…。

久:照明も全部仕込み終わってんのに。

一同:(笑)

三:…すいませんでした。

久:いやでもこれをちゃんと撮るカメラを持ってきた(映像スタッフの)竹崎さん、けっこうすごいと思いません?

若:ああ…。

久:「これは撮らないといけないシーンや」って。

若:今回も撮影するんですか?

久:はい。撮影します。

若:再演の方も。

久:はい。

若:じゃあ、三田村君どこを動くかね…!

久:うん。どこを動くかねー。

三:いやあ…ちょっと動きようないですよ、あそこは。(笑)

久:いやちょっと今ね、私、美術の竹腰さんと新しい案を考えています。(笑)

若:千明先生は大阪見に来れそうですか?

田:そうですね。行けたら…行きたいです。もう、見たいです実際に。

若:新しい一手を打つ…!

田:そうそう。

三:いや、本当にね…、コロナが…。

久:ね、コロナがね。

田:そうですね、あるから…。

若:移動がね。

三:人出がとか、ちょっと…なんとかなってほしい。

若:けど、もし…なんかあってね、動け…来れない、大阪に来れないってなっても、映像はちゃんと送って見てもらいたいですね。そうなるとね。

田:ああもう、ぜひぜひ。いやでも生で見るのと違いますよね。

若:うーん…。

久:そうですよね。

田:ね、映像と見るのとじゃ。

若:あ、そうか。カメラワークとかっていうか…スイッチングもあるし。

田:なんかやっぱり、その…臨場感っていうか、迫力みたいなのも違うし。

若:うんうん。

田:こう、ちょっとした…なんか表情とか、伝わってくるじゃないですか。目の前で見てると。

若:そうですね。

田:それが、すごいやっぱり演劇のいい所というか。楽しみの一つですもんね。

若:どうしてもね、喋ってたり動いてる人をね、カメラは追いますけど。

田:うんうん。

若:実は、そっちじゃない方の表情のリアクションだけが面白いとかってのも全部…実際に見に行くとね、目に入りますから。

田:そうですね。

若:(映像を見て)わあ。だいぶ夜になってる。

久&田:(笑)

久:あ、これ外から「点」が飛んできてるんですよ。

若:ああ!音がね。

久:佐々木君がさっき、あの点転棋士さんが最初に打った点が、相手方から帰ってくるんですよ。

若:すごい…設定。よくそんなこと思いつきますね久野さん。

久:ね…。(笑)

若:「ね。」って。(笑)

久:これUFOですね。

三&田:(笑)

若:UFOって言っちゃう。(笑) すごい照明も。

久:これ終わった後に舞台監督さんが私のとこに「すいません!」って謝りに来て。(最初は)球切れだと思ったみたいで、この電球。

田:へえー!(笑)

久:私が照明さんに「ここチカチカして下さい」って言ってたんだけど、それを伝えてなくって。

若:(笑)

久:ビックリして…。(映像を見て)これUFOですよ。

若:この仕組みは…だから大阪(会場)窓があるわけじゃないから、また違う演出になってるってことですよね?

久:そうです。今、照明さんと音響さんが、考えてくださっています。

若:いやあ…あっという間の1時間。

久:ちょうど1時間ちょっとかな。

若:だから僕は初日見に行って、違うバージョンも見た方がいいと思ってこの日も見に来て、すごい雪の…だから僕お客さん(の中)におるのかな?

久:あ、そうか。この中にいたのか。

若:そうですね。だから三田村君が「急に後ろに、僕の後ろに回った!」ぐらいの感じで。

三:(笑)

若:いやあ…ありがとうございます。

一同:ありがとうございます。

若:改めて見て、どうでした?何か感想を頂けたら、「若いな」じゃない感想を頂ければ。

田&三:(笑)

三:でもやっぱ、空間が全く…違うので、何でしょう…。一回あの実際の使う、使わして頂くスペースコラリオンでも、稽古をしたんですけど。

若:うん。

三:なんかこう…なんでしょう。その…全く空間が違うので否応なくフレッシュに。

一同:(笑)

三:なるというか。

若:再生できない。

三:はい…再演なんですけど、なんでしょう、言ってることは、セリフ自体はそんなに変わっていないんですけど。
空間自体が全く違うことと、やはり共演者みんな年を重ねていることで、いい意味で。

若:いい意味でね。

三:はい。また、全く別の新鮮な作品に仕上がっているような感触はします。

若:なるほど。千明先生は…見直したり喋ってみて、感想はございますか?

田:はい。今日…本当に次のが楽しみやな、ってのがまず、あるのと。
やっぱり前回の分は前回の分で…私は実際に見たんで、思い出しますよね。映像を見てると。「あー、こうだったなあ」とか

若:うんうん。

田:いや、すごいセリフが多かった…多いというか、ぶわーって喋るシーンとかがあったと思うんですけど、やっぱり俳優さんがすごいなあっていうのも感じましたし、けっこう会場でこう笑いが起きたり、とかいう時もあったんで。
けっこう色んな楽しみ方というか、本当に一ファンとして、もうすごい楽しんで見てます。

若&三&久:ありがとうございます。

若:久野さんは?

久:はい…。

若:意気込みとか、感想とかありますか?

久:あ、意気込み…。うーん…やっぱり三田村さんも言ってはったんですけど、会場が違うと全然…全然違いますね。
全然…で、どっちかというと私は会場に合わせて作品は変わったほうがいいと思うので。だって役者は稽古できるけど会場は稽古できないですからね。

田&三:(笑)

若:なるほど。

久:ので、みんな無意識に会場に合わせて芝居が変わっていってる気がします。でもすごい今度の会場は、また全然違うんですけどすごい素敵な場所です。

若:ありがとうございます。ぜひこのコメンタリーも見て、実際コメンタリーの入ってない…ちゃんと映像もDVDでも販売してたりとかするんで。

久:あ!Amazonで見れるんです!

若:Amazonで。

久:Amazon Primeで、今。

若:あ!すごい!観劇三昧…すごい…!(観劇三昧)で見れたりもするので、この話が何だったのかを楽しんで頂いたら、本編の方も見て頂いて。
で、2月の大阪公演を見た後にもういっぺん見てみる、元の作品を見てみるのもありですし、また埼玉でもこの公演をやる予定なので、そちらも見て頂ければなと思います。
はい。ではこの1時間、聞いて頂いてた皆さま、ありがとうございました!では、これで終了します。

一同:ありがとうございましたー!

『点転』大阪公演 レビュー  田村千明三段(関西棋院騎士)


後援の関西棋院所属で、劇中アナウンス担当の田村千明三段による、大阪公演レビューです。

*********************:

点転にアナウンス役として出演させていただきました、囲碁棋士の田村です。
私自身、前回の「・・・」にもエキストラとして出させていただき、初めて囲碁をモチーフとした演劇を見させていただきました。

劇作家の久野さんが囲碁に触れた時の感覚や棋士の世界観というものも、囲碁の世界に普段どっぷり使っている私達とまた違う角度で見た世界が描かれていて、改めて囲碁の深さを味わえた作品でした。
また、囲碁という伝統文化を演劇という形で表現してくださったことは、囲碁界初の試みでもあり話題にもなりました。

今回の大阪公演も初演を観させていただきました。

まず前作を上回る完成度に驚きました。
点転という競技を作った人物の葬儀。火葬場で初めて出会う故人の周りの人達が初めて知る真実。
出演者の誰の目線で見ても違った世界が見えて観れば観るほど面白い作品でした。
囲碁を知っている方は改めて囲碁を好きになると思うし、知らない方は、ルールを知った後に観ると全然違った劇に変化するのではないでしょうか。

役者さんやスタッフさんたちともリモートなどでお話させていただきましたが、皆さん囲碁を覚えていただき、役作りもされていました。これからも、陰ながら感謝と尊敬を込めて応援をしていきたいと思います。

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『点転』上演台本

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埼玉公演に向けて稽古が始まりました  湊游(演出助手)

大阪公演千秋楽からちょうどひと月、映像配信も開始され着々と次に向かって進んでいます。
今日は大阪公演まで創りあげたものを一旦リセットするための稽古になりました。

なぜそんなことをしたかというと、
今回のツアー公演、大阪と埼玉で上演空間があまりにも違うからです。


埼玉公演が行われる場所なのですが「進修館 小ホール」という所になります。(下記URLより)

https://www.shinsyukan.or.jp/guide/f1_shouhall.html

収容人数…200名。
とんでもなく広い空間です。


大阪公演を行ったスペースコラリオンは、比較的小さな部屋に沢山の物が溢れている、
いわば倉庫のような空間で、俳優のアクティングエリアもかなり限定されていました。

進修館 小ホールは、反対に物は少なく広大で天井もすごく高い。
俳優が飛んだり跳ねたり走り回ることもできます。
P1620454 (1)


こうなると会話をする人同士の距離から高さまで全然違いますし、移動方法も変わります。(大阪公演ではできなかった「走る」ということが可能になったり)

だから同じ台詞を喋っても、言葉の意味が変わるし、登場人物の動き方も変わる。
声のボリュームも高さも変わる。


しかし、そうは…思っていても、
昨年から続けて数ヶ月稽古したものが身体に定着しています。
意識していないとその定着したものが、どんどん出てきてしまう。


そこで上演空間や大阪公演をリセットすることについてみんなで共有してから稽古に臨みました。

何度かシーン稽古を行っては止めてを繰り返していくと、だんだん俳優陣の動きや声が変わってゆきました。
稽古の始まりと終わりとでは演技が全然違っていたので、ここからまた1ヶ月半後にはどんな作品になるのかとても楽しみです!


ちなみに、リセット前の大阪公演はどんな模様だったのか?
こちらから大阪千秋楽の配信映像がお買い求め頂けます。こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

https://xxnokai.stores.jp/items/603dc1b1c19c456aa4604a85


『点転』大阪公演 映像配信開始!

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点々の階『点転』大阪公演、全ステージ終了しました。
千秋楽の舞台映像を編集し、映像配信開始いたしました。
(5月31日まで、何度でもご視聴いただけます)

見るたびに物語が違って見えると言われる「点転」を、ぜひ、映像でもお楽しみ下さい。

こちらから配信チケットお買い求めいただけます。

配信チケットはこちらから↓
https://xxnokai.stores.jp/items/603dc1b1c19c456aa4604a85

上演まで後1週間

前回「上演まで1か月」という稽古日記だったのに気づけばもう1週間です。
いよいよ大詰めです。
今日の稽古では音響の合田さんが作った仮音源を稽古に加えて稽古を実施しました。
今回再演される「点転」では、会場も色々な音に特徴のある会場になっております。
この会場ならではの音を劇場で録音し、劇中の音声へと合田さんが作り直しています。

また、囲碁に似た競技「点転」は囲碁同様に「打つ」競技です。
すなわち「点を打つ」競技なのです。

点を打つと、どんな音がすると思いますか?ぜひ劇場に聞きにいらしてください。


また、明日2月21日の日曜日に、今回後援である関西棋院さんの棋士さんたちが参加されているYoutubeチャンネル『ごやねんチャンネル』に点々の階から数名、出演させて頂けることになりました!


【ごやねんTwitterより抜粋】

囲碁のことを知ってから「点転」を観ると面白さが高まること間違いなしです。
(自分もごやねんさんのYoutubeで入門講座動画を見させていただきました…(笑))

こちらもぜひご視聴頂ければと思います。

劇場稽古を繰り返している(佐々木峻一)

何度もスペースコラリオンさんで稽古させてもらっている。

本来なら本番と同じ場所で稽古させてもらえることはとても珍しいことで、ありがたいことなのに、今回は何度も稽古で使わせてもらって、しかも客席も美術も組んだ状態で、ほぼ本番と同じ環境をつくって何度も稽古できている。コロナ禍で使う予定だった稽古場が時短営業になった影響なのだけど、ここはコロナ禍だからこそ巡り会えた環境をありがたく思わなければいけないところ。

なのに、そんな稽古を4ヶ月も繰り返してきて、最近妙にスペースコラリオンという場所に身体が拒否反応を示すようになってしまっていた。なんだか舞台上に立つととにかく落ち着かなくて、客席があるということに腹が立って「舞台に立って演技してんなあ」という気持ちがつきまとって、セリフが全部気持ち悪く感じてしまっていた。通し稽古になるとひどくなって「こんなんじゃだめだ、ここは舞台じゃなくて、あれは客席じゃなくて、ちゃんとしなきゃダメだ」と思って頑張れば頑張るほど力が入って、普段の稽古でできていたことができなくなってしまう。贅沢な話で、贅沢病みたいだな。

なんとかしなければと思って、本番週の前に最後にスペースコラリオンを使わせてもらえるこないだの火曜日に、演出家に無理を言った。「稽古開始前に1時間アップをさせてください。コラリオンで手足を伸ばせる場所を1時間ください。そのあとセリフ合わせをさせてください」演出部はコラリオンさんに予定より1時間早く開けてもらえるようお願いしてくれて、コラリオンさんは17時に開ける予定のところを16時にしてくれた。ありがたいことで、自分はわがままなやつだ。

そうやって十三に余裕をもって着いてから駅前の松屋で牛丼を食べて、ゆっくりコラリオンに向かって、場所に自分が馴染むようにゆっくりアップをした。でもどうにも気持ち悪さは抜けなかった。いったん苦手意識を持ってしまうと抜け出せなくなるみたいな感じで、自分はメンタル弱いなあ、とほほ、なんとかしないとなあ、と思いながら、舞台上で適当に動きながらなんとなく読み合わせをした。言葉を喋れている感じがしなかった。

でもそうやって舞台を使わせてもらいながら適当に動いている中で、自分がなぜこの場所で落ち着かないのかがだんだん分かってきた。舞台装置として床に置かれているものを目で追って、視線がずっと下にいってしまう。舞台の床材の凹凸と軋みが気になる。普通に立ってるときにすぐ足が変な形になる。手も落ち着かなくなって手を使ったジェスチャーが増える。

そういうことに気づいて、目線と手足をフラットにするように意識して読み合わせを進めて、演出家と解決策を探っていたら、舞台の明るいことと客電が暗いことが気になり出した。そして照明をどうにかする方法を見つけたことで、(そのことでスタッフさんにぼくのわがままを聞いてもらうことによって)久しぶりにコラリオンでちゃんと作品を立ち上げることができた。

なんて自分は不器用な役者なんだ!と今回はとくに思わせられましたが、時間をかけていっしょに解決策を探らせてもらえる演出部と共演者のみなさんに恵まれていてよかったよかった、と思うばかりです。闇雲にならずに、諦めずに、納得いかないことにはとことんこだわることができて、周りの環境には感謝しかない。あとはしっかりいい上演ができるように、自分の仕事に責任を持って、がんばるんばです。

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